ジャーゴンファイル

ジャーゴンファイルの歴史とその影響

ジャーゴンファイルとは、ハッカーコミュニティにおける専門用語やスラングを集めた辞書です。この辞書は、元々マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学、BBNテクノロジーズ、カーネギーメロン大学、ウースター工科大学といった場所で育まれた技術文化に基づいています。特に人工知能や関連技術の発展と深い関わりがあります。

ジャーゴンファイルの始まり

ジャーゴンファイルは1975年、スタンフォード大学のラファエル・フィンケルにより始められました。当初は「AIWORD.RF[UP,DOC]」という名前で保存されていましたが、その内容は単なるAI用語に限らず、ハッカー文化全体にわたる広範な用語を含むものでした。1976年、マーク・クリスピンがファイルに気づき、マサチューセッツ工科大学にコピーを持ち込みました。彼はファイルの内容の豊富さに感銘を受け、自分のディレクトリに「AI:MRC;SAIL JARGON」として保存しました。

ファイルの改訂と発展

その後、ファイルは「JARGON >」に改名され、マーク・クリスピンとガイ・スティール・ジュニアが共同で内容を充実させました。しかし、ファイルの名称が「ジャーゴンファイル」と広まったことで、本来の意味である専門用語ではなく、スラングとしての位置づけを持たれることとなりました。この間、主導的な役割を果たしたラファエル・フィンケルは徐々に関与を薄め、ドン・ウッズがスタンフォード大学担当の連絡係となりました。

1983年頃までファイルは随時改訂され、リチャード・ストールマンなどにより、マサチューセッツ工科大学やITS関連の新語が追加されました。1981年にはチャールズ・スパージェンによって、ファイルの一部が「CoEvolution Quarterly」に掲載され、初めて印刷物として広まりました。

大衆向けの改訂

1983年、ファイルは「The Hacker's Dictionary」という形で出版され、広く知られるようになりました。この書籍では、当時の著者たちがそれぞれ内容の改訂に寄与しました。ただし、その後の改訂は一時的なものであり、更新が停滞することになりました。その後の人工知能研究の現状や、ハッカー文化の変遷も影響したためです。

新しいジャーゴンファイル

1990年代以降、エリック・レイモンドが新しい改訂版の保守を引き継ぎ、ジャーゴンファイルはより広範なコンピュータ文化の用語を含むようになりました。新たな興味を持つメンテナが自らの用語を追加するようになり、かつては特定の文化に限定された内容が、さまざまな技術コミュニティに共通する辞典として進化しました。

新しい版には、Usenetに由来する項目や、C言語、UNIX利用者などの最近の用語が追加されました。この変化によってジャーゴンファイルは歴史的な文書から、技術用語の一般的な辞典へとシフトしました。これには賛否が分かれ、オリジナルのハッカー文化を軽視しているという批判もあります。

まとめ

ジャーゴンファイルの影響は、単なる用語の集約にとどまらず、ハッカーコミュニティ全体の文化やユーモアにまで及んでいます。その背景には、急速に進化するコンピュータ技術や社会環境がありましたが、一方で、その文書としての価値や文化の記録としての役割は依然として重要です。今日でも、ジャーゴンファイルはハッカー文化の象徴的存在として、多くの人々に親しまれています。

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