ジャール平原

ジャール平原は、ラオス中部のシエンクワーン県に位置するシエンクワーン台地に広がる、歴史的、文化的に重要な場所です。この平原には、巨大な石壺が多数点在しており、その数は400箇所以上にも及ぶとされています。これらの石壺がなぜ、どのようにして作られたのかについては、未だに多くの謎が残されています。

石壺の起源と用途

考古学者たちは、これらの石壺が古代モン・クメール族によって、1500年から2000年前に作られたと考えています。回収された石壺の年代は、紀元前500年から西暦800年頃のものとされています。人類学者や考古学者の間では、これらの石壺が骨壷として、あるいは食料貯蔵用の容器として使用されたという説が有力です。

ラオスの伝説

一方、ラオスの伝説では、ジャール平原にはかつて巨人の種族が住んでいたと語られています。また、クン・チュンという古代の王が、長年の戦いの勝利を祝うために、大量のラオ・ハイ（ライスワイン）を醸造し、貯蔵するために石壺を造ったという伝説も存在します。この伝説は、石壺の巨大さとその数にまつわる謎を解き明かす鍵となるかもしれません。

初期の調査と研究

ジャール平原の調査が始まったのは1930年代のことです。フランス極東学院の考古学者マドレーヌ・コラーニは、チームを率いて石壺の発掘調査を行いました。彼女たちは、石壺の周辺で焼かれた人骨や灰を発見し、この地域の古代における葬祭習慣を示唆する重要な証拠を提示しました。コラーニの研究は、現在に至るまで最も影響力のある研究の一つとされています。

その他の出来事

ジャール平原は、歴史的、文化的な側面だけでなく、20世紀の出来事とも深く関わっています。1961年には、当時参議院議員であった辻政信がこの地で謎の失踪を遂げました。失踪の原因については、パテート・ラーオによる暗殺説など様々な憶測が飛び交いましたが、真相は未だに解明されていません。

また、1960年代からのラオス内戦時には、サムトン村にアメリカ国際開発局が拠点を置き、アメリカ軍の顧問団も駐留していました。しかし、北ベトナム軍がラオス国内へ進出したことで、アメリカ人関係者は1970年3月までに平原から撤退しました。ジャール平原は、このように、歴史と政治が複雑に絡み合った場所でもあります。

ジャール平原は、古代から現代に至るまで、人々の生活と歴史を刻んできた場所です。その謎に満ちた風景は、訪れる人々に深い感動と探求心を抱かせます。現在も発掘や研究が続けられており、今後の新たな発見が期待されています。

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