パテート・ラーオ

パテート・ラーオ：ラオスの共産主義革命勢力

パテート・ラーオ（ປະເທດລາວ）は、「ラオスの国」を意味し、1950年代から1970年代にかけてラオスで活動した共産主義革命勢力です。ラオス内戦やベトナム戦争といったインドシナの動乱期において、重要な役割を果たしました。

成立の背景

第二次世界大戦後、ラオスではラオ・イサラ（自由ラオス）と呼ばれるレジスタンス組織が結成され、一時的に臨時政府を樹立しました。しかし、フランス軍の再進攻により、政府はタイへ亡命を余儀なくされます。1949年、ラオス王国がフランス連合内の協同国として成立しますが、外交権や防衛権は制限されたままでした。

亡命政府の一部はフランスに協力する一方、スパーヌウォン王子やカイソーン・ポムウィハーンなどの左派勢力は、ベトミン（ベトナム独立同盟）やインドシナ共産党の影響を受け、1950年8月に「ネオ・ラオ・イサラ」（ラオス自由戦線）を結成し、反仏闘争を継続しました。

1953年、ネオ・ラオ・イサラの戦闘部隊として「パテート・ラーオ」が組織され、ベトミンと協力してラオス北西部を支配下に置きました。初期のパテート・ラーオは、平地のラオス人よりも、重い税負担を受けていた高地の少数民族が中心となっていました。

ジュネーブ協定と内戦の激化

1954年のジュネーブ協定により、ラオスから外国軍が撤退することになりました。パテート・ラーオは、自由選挙の実施を条件に、中南部から撤退し北部2省に集結することを余儀なくされました。停戦監視のため、国際休戦監視委員会が設置されました。

1956年、ネオ・ラオ・イサラは「ネオ・ラオ・ハク・サット」（ラオス愛国戦線）に改称し、1957年にはラオス王国政府との統一政府樹立を宣言しました。しかし、1958年に行われた補欠選挙でラオス愛国戦線が躍進したことを受け、親米右派のサナニコン政権は愛国戦線の政治家を追放・弾圧しました。これにより、王国軍に編入されていたパテート・ラーオ派の兵士が相次いで脱走し、1959年にはパテート・ラーオ軍と王国軍の間でラオス内戦が勃発しました。

ベトナム戦争との関わり

1960年代半ばから、アメリカと南北ベトナムがラオス内戦に介入し、戦況は泥沼化しました。アメリカ軍は、ホーチミンルートやパテート・ラーオ支配地域を猛爆し、内戦はさらに激化しました。この時使用されたクラスター爆弾の不発弾が、現在もラオス国内に残存し、人々の生活を脅かしています。

1973年、ラオス和平協定が成立し、アメリカ軍がベトナムから撤退すると、パテート・ラーオの軍事的優位が確立されました。

ラオス人民民主共和国の成立

1974年、三派連合によるラオス民族連合政府が成立しました。1975年、サイゴンが陥落すると、ヴィエンチャンでは反右派デモが発生し、右派閣僚が政権を離脱しました。王国軍は武装解除され解散、パテート・ラーオ軍が首都を掌握しました。同年12月、連合政府は王政を廃止し、ラオス人民民主共和国を成立させました。

その後、中立派軍を吸収しラオス国家建設戦線と改称しましたが、現在でも外国ではパテート・ラーオの名称が用いられることがあります。

パテート・ラーオは、ラオスの独立と社会主義化に大きく貢献した勢力として、その歴史的意義は大きいと言えるでしょう。

もう一度検索