ジュゼッペ・テラーニ

ジュゼッペ・テラーニ（Giuseppe Terragni, 1904年4月18日 - 1943年7月19日）は、20世紀前半のイタリアを代表する建築家であり、都市計画家です。彼は、合理主義建築の主要な推進者として知られ、イタリアにおけるモダニズム建築の発展に大きく貢献しました。テラーニは、ドイツなどで興隆した建築のモダニズムやインターナショナル・スタイルにいち早く反応し、その理念をイタリアに導入・普及させようと努めました。また、彼はムッソリーニ政権下のファシズム体制のための建築も数多く手がけ、「カサ・デル・ファッショ」や「ヴィッラ・ビアンカ」などの優れた建築物を実現させました。

生涯と業績

1904年、テラーニはイタリア北部のメーダで生まれました。コモの工科学校を卒業後、ミラノのポリテクニークで建築を学び、1927年には兄弟のアッティーリアと共にコモに建築設計事務所を開設しました。事務所開設当初は、チェーザレ・カッターネオらと共にコモ市の都市計画にも携わっていました。

テラーニは、イタリアにおけるモダニズム建築運動の先駆者として、その代表となる多くの建築物を残しました。彼は、ファシストの建築家集団であり、イタリア合理主義建築を主導した「グルッポ7」の創設メンバーでもあります。このグループでは、新古典主義やネオ・バロックなどの復古主義を激しく非難し、1926年にはグループ内の進歩主義的なメンバーと共に宣言を発表し、復古主義との論争を主導しました。テラーニの建築家としての活動期間はわずか13年でしたが、その間にコモに小規模ながら重要なデザイナー集団を形成し、コモとミラノをモダニズム建築・イタリア合理主義建築の中心地としました。

テラーニの作品は、初期の合理主義的な作風から、後期には近代建築の理論とイタリアの伝統を融合させた、より「地中海性に富んだ」独特な建築様式へと変化しました。彼の作品は146点に及びますが、現存するものは22点です。また、ダンテ・アリギエーリの『神曲』をモチーフにした記念碑的な建築「ダンテウム」（Danteum）など、実現しなかった計画案も多数残されています。

テラーニの建築の特徴

テラーニの建築は、機能性と合理性を重視したモダニズムの原則に基づきながらも、イタリアの伝統的な要素を巧みに取り入れている点が特徴です。彼は、幾何学的な形態やシンプルなデザインを好み、素材の質感を生かした表現を追求しました。また、自然光を効果的に利用することで、建築空間に豊かな表情を与えています。

テラーニの作品は、単に機能的な建築物としてだけでなく、芸術作品としての側面も持ち合わせています。彼の建築は、当時の社会や文化を反映しており、今日においても多くの建築家やデザイナーに影響を与え続けています。

主な作品

テラーニの代表的な作品としては、「カサ・デル・ファッショ」（コモ、1932-1936年）や「ヴィッラ・ビアンカ」（コモ、1936-1937年）などが挙げられます。これらの建築物は、テラーニの建築理念を具体化したものであり、イタリア合理主義建築の傑作として知られています。

「カサ・デル・ファッショ」は、ファシスト党の地方本部として建設された建物で、その幾何学的な外観と機能的な内部構造が特徴です。「ヴィッラ・ビアンカ」は、個人邸宅として建てられ、テラーニの建築スタイルがより洗練された形で表現されています。

その他の作品

カーサ・ジュリアーニ・フラジェッシ（1929-30年）
モンツァ戦没者慰霊碑コンペ案（1930年）
ファシスト党青年会館コンペ案（1932年）
ファシスト党本部コンペ案（1934年）
カーサ・デル・ポポロ（コモ、1939年）
サンテリーア幼稚園（コモ、1936-37年）
リチェッタ・カーサ（コモ、1938-39年）
ノヴァ・コモの集合住宅（1929-39年）
ダンテウム（1938年）

晩年と遺産

テラーニは、ムッソリーニ政権崩壊直前に脳卒中で倒れ、1943年7月19日にこの世を去りました。彼の短い生涯にもかかわらず、その建築はイタリアのモダニズム建築に大きな影響を与え、今もなお多くの人々に賞賛されています。彼の作品は、建築史における重要な遺産として、大切に保存されています。

関連資料

(イタリア語) Centro studi Giuseppe Terragni
* 「ジュゼッペ・テラーニ ファシズムを超えた建築」展 （水戸芸術館、1998年）

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