ジュブナイル (映画)

概要

『ジュブナイル』は、2000年 7月15日に公開された日本のSF映画です。山崎貴監督のデビュー作であり、少年少女たちが未来から来たロボット「テトラ」と出会い、地球を侵略しようとする宇宙人と戦う物語です。VFXを多用した映像表現と、テトラの愛らしいキャラクターが話題を呼びました。

物語は、2000年の夏休みにキャンプ場を訪れた少年少女たちが、謎の光を目撃し、そこでテトラと出会うことから始まります。テトラは、未来から来たロボットであり、自分を修理するために少年少女たちに協力を求めます。彼らはテトラと共に、宇宙の商人であるボイド人の地球侵略計画を知り、それに立ち向かうことになります。

テトラは、その可愛らしい動きや言葉で観客の心を掴み、特に女性から人気を集めました。また、公開前には朝日新聞の一面でテトラのペーパークラフトが掲載されたり、別冊コロコロコミックで漫画化されたりするなど、多角的なプロモーションが行われました。さらに、監督自らが執筆した小説版も出版され、映画とは異なる視点から物語を楽しめるようになっています。

本作は、2000年のイタリア・ジフォーニ映画祭子供映画部門でグランプリを受賞したほか、ニフティ映画大賞（現・日本インターネット映画大賞）2000の日本映画部門映像効果賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。2024年11月には、4Kデジタルリマスター版が全国で一週間限定上映され、再び話題を呼びました。

制作経緯

本作の制作は、当初白組で企画されていた日本の妖怪を題材とした映画『鵺/NUE』が、制作費30億円という大規模な作品であったため頓挫したことがきっかけです。代わりに、新人監督である山崎貴の腕試しとして、本作の企画が立ち上げられました。

当初は制作費1億5000万円程度で、6月ごろの公開を目指し、撮影はオールロケでVFXを1箇所に集約するという小規模なものでした。しかし、ROBOTの社長である阿部秀司の尽力により、制作費は5億円に増額され、全国東宝系での夏休み公開、香取慎吾の出演も決定するなど、大規模な作品へと発展しました。

また、本編終盤の2020年のシーンで登場する主人公たちの大人になった姿を、2000年パートと同一のキャストで再撮影し「完全版」を制作する構想も、当時から存在していました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、この構想は実現しませんでした。代わりに、2022年公開の映画『ゴーストブックおばけずかん』で、遠藤雄弥と鈴木杏が主人公の両親役として本作と同一の役名で友情出演し、テトラも劇中に登場しています。

あらすじ

2000年の夏休み、坂本祐介、木下岬、大野秀隆、松岡俊也の4人は、キャンプ場で謎の光を目撃します。光の正体を追ってたどり着いた森で、彼らは高性能自立型ロボット「テトラ」と出会います。テトラは、祐介に「会った」と言い、彼らはテトラを祐介の家に置くことにします。テトラの要求に従い、電子機器の廃品を集めると、テトラは自らを改造し二足歩行が可能になります。

さらに、テトラはインターネット接続を求めて、近所の電気屋に侵入します。そこで出会った店主の天才物理学者、神崎宗一郎の協力を得て、テトラの正体を調査しつつ夏休みを過ごします。しかし、ある日テトラは姿を消してしまいます。

そのころ、地球上空には、宇宙の商人ボイド人の巨大宇宙船団が飛来していました。彼らは、地球の海を回収するため「シースナッチャー」を構築し、地球人の目から隠れて準備を進めていました。

一方、地球に潜入していた「オーバーテクノロジー調査破壊班」のリーダーは、岬の従姉妹である範子の姿を模倣して地球の情報を集め、テトラを破壊しようとします。テトラは、ボイド人と戦うために戦闘用ロボット「ガンゲリオン」を制作し、祐介は岬を救うため、ガンゲリオンに乗り込みボイド人と戦います。

祐介は、ボイド人の攻撃をかわしつつも苦戦を強いられますが、偶然とボイド人のミスが重なり、シースナッチャーを崩壊させることに成功します。さらに、テトラの機転により岬を奪還し、ボイド人は地球から撤退します。しかし、オーバーテクノロジー調査破壊班は、祐介への報復攻撃を行い、テトラは祐介を庇い機能を停止してしまいます。

テトラから排出された記憶メディアが、2000年には存在しない大容量製品であったことから、テトラを修理する技術がないことが判明します。祐介は、失意の中、ロボット工学を志し、テトラの修復を誓います。

時は流れ、2020年。祐介はロボット工学のエンジニアとして働き、岬と結婚していました。テトラのことは過去の思い出となっていましたが、テトラの記憶メディアの製品発表資料をネット上で発見し、テトラと同型のペットロボット製品が発売されるであろうことに期待します。そんな中、神崎からタイムマシンの完成を知らせる連絡があり、テトラの開発を依頼されます。祐介は様々な課題を乗り越え、かつて出会ったテトラを完成させます。

2000年へテトラを送り込む日、祐介たちはタイムマシン施設で再会を果たします。祐介は修復したテトラも連れてきていました。テトラは再起動し、狙撃された瞬間からの20年という時間の経過を認識します。2000年へテトラを転送する際、タイムマシン上の新品のテトラは不安げに祐介たちを眺めていました。それを見たテトラは、かつて自分が2000年に送り込まれる時、同じように祐介たちを眺めていたことを語ります。

登場人物

坂本祐介（演：遠藤雄弥 / 20年後：吉岡秀隆）：本作の主人公。ロボット好きの12歳の少年。岬に好意を抱いているが、伝えられずにいる。
大野秀隆（演：清水京太郎 / 20年後：川平慈英）：情報通で、祐介の恋をからかう。
松岡俊也（演：YŪKI / 20年後：高杉亘）：岬とは幼馴染で、少し嫉妬している。
木下岬（演：鈴木杏 / 20年後：緒川たまき）：勝ち気な性格の、3人のマドンナ的存在。
テトラ（声：林原めぐみ）：謎の小型ロボット。祐介や神崎のことを知っている。
神崎宗一郎（演：香取慎吾）：電気屋の店主であり、天才物理学者。タイムマシンの研究をしている。
木下範子（演：酒井美紀）：岬の従姉妹。ボイド人に姿を模倣される。

用語解説

ボイド人：宇宙の商人。地球の海を回収しようとしている。
マザーシップ：ボイド人の巨大母船。
サブシップ：マザーシップに付随する宇宙船。
ドーム艦：シースナッチャーの中核を成す艦。
シースナッチャー：ボイド人が開発した海の回収装置。
サンプル採取装置：ボイド人が使用する小型の吸収装置。
オーバーテクノロジー調査破壊班：ボイド人の一部署。テトラを破壊しようとする。
ボイドスカウター：オーバーテクノロジー調査破壊班の使用する戦闘宇宙船。
テトラ：小型完全自律型AIロボット。2020年に祐介によって開発され、タイムマシンで2000年に送られる。
2000TBディスク：テトラの記憶メディア。2000年には存在しない大容量製品。
ガンゲリオン：テトラが制作した戦闘用ロボット。祐介が操縦する。
物質転送装置：神崎が開発した装置。物体を一瞬で別の場所へ転送する。
タイムマシン：神崎が2020年に完成させたタイムマシン。

スタッフ

監督・脚本・VFX：山崎貴
音楽：清水靖晃、川嶋可能
主題歌：「JUVENILEのテーマ〜瞳の中のRAINBOW〜」、「アトムの子」作詞・作曲・編曲・歌：山下達郎

小説版

監督自らが執筆した小説版は、映画とほぼ同じストーリーですが、新エピソードや登場人物の心理描写、背景説明などが加筆されています。

漫画版

馬場民雄による漫画版は、基本的なストーリーは原作に即していますが、細部の展開やキャラクター設定が異なっています。

類似作品

* アース・トゥ・エコー（原題：Earth to Echo）

この映画は、子供たちの冒険心と友情、そして科学技術に対するロマンを、感動的に描いた作品です。

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