ジュリアン (映画)

『カストディ／カストディ』：複雑な親権争いとDVの影を描くフランス映画

2017年、フランスで公開されたグザヴィエ・ルグラン監督の長編映画デビュー作『ジュリアン』(原題: Jusqu'à la garde)は、日本で『CUSTODY／カストディ』のタイトルで公開されたサスペンスドラマです。アカデミー賞ノミネート作品『すべてを失う前に』の長編版として制作され、DV(ドメスティックバイオレンス)という重いテーマを、親権を巡る争いを通して繊細に描き出しています。

物語の中心は、離婚した夫婦と、彼らの子どものジュリアンです。母親ミリアムは、DVの被害者として、父親アントワーヌとの接触を避けようとしています。離婚調停の結果、ジュリアンは週末ごとに父親と過ごすことになりますが、ミリアムはアントワーヌにジュリアンの居場所を教えることを拒否します。

アントワーヌは、ジュリアンに会うたびに母親の居場所を探りますが、ジュリアンは母親を守ろうと嘘をつき続けます。この親子間の葛藤が、物語に緊張感を与えています。アントワーヌの怒りは次第に増幅し、ついに彼の怒りが爆発する場面は、作品全体のクライマックスとなっています。

キャストには、トマ・ジオリア(ジュリアン役)、レア・ドリュッケール(ミリアム役)、[ドゥニ・メノーシェ]など実力派俳優が名を連ねています。子供であるジュリアンの複雑な心情や、母親と父親のそれぞれの苦悩、そして周囲の人々の反応が丁寧に描かれており、観客に強い印象を与えます。

『カストディ／カストディ』は、単なるDV問題を描いた映画ではありません。離婚という現実的な問題、親権を巡る複雑な人間関係、そして子供たちの繊細な心を、リアルな描写で表現しています。母親と父親のどちらが正しいか、といった単純な構図ではなく、それぞれの立場や心情を理解することで、より深い理解が得られます。

本国フランスでは40万人以上の観客を動員し、ロングランヒットを記録しました。また、第74回ヴェネツィア国際映画祭に出品され、銀獅子賞（監督賞）を受賞するなど、高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは95%の高評価、Metacriticでも平均83点と、批評家からも絶賛されています。

日本では、フランス映画祭2018で上映された後、2019年に劇場公開されました。多くの観客に、DV問題や親権問題について改めて考えるきっかけを与えた、忘れ難い作品と言えるでしょう。映画を通して、家族のあり方や、DV被害者への理解、そして子供の権利について、改めて考える機会を与えてくれるでしょう。

この映画は、単なるエンターテイメント作品ではなく、社会問題への深い洞察を提供する、意義深い作品です。登場人物たちの葛藤や苦悩を通して、観客は自分自身の人生や家族、社会問題について、様々な角度から考えることができるでしょう。

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