ジュリアン・フェロウズ

ジュリアン・フェロウズ：貴族社会の物語を紡ぐマルチタレント

ジュリアン・フェロウズは、イギリスを代表する文化人であり、その多才ぶりは実に多岐に渡ります。俳優、脚本家、小説家、映画監督、そして政治家として、華麗なるキャリアを築き上げてきたフェロウズは、特にテレビドラマシリーズ『ダウントン・アビー』の制作と脚本によって世界的に知られています。1949年8月17日、エジプトのカイロで、アラブ専門家で外交官であった父と母との間に生まれました。

華麗なる出自と教育

フェロウズの両親は、彼が幼少期を過ごしたエジプトで出会いました。彼の父は、外交官としてのキャリアを積む傍らアラブに関する深い専門知識を持っていました。その後、彼の母親と死別した父は再婚し、フェロウズは複雑な家庭環境の中で育ちました。しかし、フェロウズ家はローマ・カトリックを信仰しており、彼は幼少期からカトリック教育を受けました。その後、ヨークシャーのベネディクト会系名門校アンプルフォース・カレッジを経て、ケンブリッジ大学モードリン・カレッジへと進学。恵まれた環境と質の高い教育は、彼の後の活躍に大きく貢献したと言えるでしょう。

貴族とのつながりと爵位

フェロウズは、1990年に第3代キッチナー伯爵ヘンリー・キッチナーの姪であるエマ・ジョイ・キッチナーと結婚しました。この結婚は、彼の貴族社会との関わりを深めるきっかけとなりました。1998年には、妻の実家の縁戚関係を反映して名字をキッチナー＝フェロウズに変更。2011年には、キッチナー伯爵が男子後継ぎを残さず亡くなったことに伴い、キッチナー伯爵位は消滅。しかし、同年、フェロウズ自身は一代貴族としてウエスト・スタフォードのフェロウズ男爵に叙爵され、貴族院議員に就任。保守党に所属し、政治家としての活動も開始しました。彼の妻も、女王より伯爵令嬢に相当する礼遇を受けることとなりました。

興味深いのは、フェロウズ自身が平民出身であるにも関わらず、継母と妻が貴族の血を引いているという点です。平民出身ながら貴族社会に深く関わり、その複雑な人間関係や社会構造を深く理解していることが、彼の作品に反映されていると言えるでしょう。さらに、ダイアナ元妃の姉の夫であるロバート・フェロウズ男爵とは遠い親戚関係にあることも分かっています。

俳優としてのキャリア

フェロウズは俳優としてのキャリアも持ち合わせています。1981年にロサンゼルスに移住し、2年間俳優として活動した後、イギリスに戻ってテレビや映画を中心に活躍しました。数々の作品に出演し、脚本家としての活動と並行して俳優業も続けています。出演作品には、『恐竜伝説ベイビー』『ダメージ』『永遠の愛に生きて』『ジェイン・エア』『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』などがあります。

脚本家としての成功

フェロウズの真価を発揮しているのは、何と言っても脚本家としての才能です。貴族階級に関する深い知識と洞察を生かし、2001年には映画『ゴスフォード・パーク』の脚本でアカデミー脚本賞を受賞。この作品は1932年のイギリス貴族社会を舞台にしたもので、彼の才能を世に知らしめました。その後も、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』『悪女』『ツーリスト』『アガサ・クリスティー ねじれた家』など、多くの映画やドラマの脚本を手がけています。

しかし、フェロウズを世界的な名声に押し上げたのは、何と言っても2010年から放送開始されたテレビドラマシリーズ『ダウントン・アビー』です。戦間期のイギリス貴族階級と使用人たちの生活を描いたこの作品は、高い評価を受け、エミー賞脚本賞（ミニシリーズ/テレビ映画部門）を受賞。6シーズンに渡り放送され、その後映画化もされるなど、彼の代表作となっています。

他にも、ブロードウェイ舞台『スクール・オブ・ロック』の脚本、Netflixドラマシリーズ『ザ・イングリッシュ・ゲーム』の共同脚本、『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』の脚本、『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』の脚本など、近年も精力的に活動しています。特に『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』は、19世紀末アメリカの「オールド・マネー」と「ニュー・マネー」の対立を描いた作品で、『ダウントン・アビー』と通じるテーマを含んでいます。

監督業と政治家としての顔

フェロウズは、2005年には映画『孤独な嘘』で監督デビューを果たし、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞新人監督賞を受賞。監督としても高い評価を得ています。また、貴族院議員としての政治活動にも携わっています。

まとめ

ジュリアン・フェロウズは、平民出身でありながら、俳優、脚本家、小説家、映画監督、そして政治家として、多方面で卓越した才能を発揮し、成功を収めてきた稀有な存在です。彼の作品は、貴族社会への深い理解と洞察に基づいており、世界中の人々に感動と興奮を与え続けています。特に『ダウントン・アビー』は、彼の代表作として、今後も長く人々に愛され続けるでしょう。彼の今後の活躍にも期待が高まります。

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