ジョグコン

1998年12月3日、当時のナムコ（現在のバンダイナムコエンターテインメント）は、PlayStation向けにユニークなゲームコントローラー型周辺機器「ジョグコン」を発売しました。希望小売価格は税込み3,990円でした。これは単なる標準コントローラーの亜種ではなく、特定のゲーム体験を追求するために設計された、意欲的な製品でした。

特徴

ジョグコンの最大の特徴は、コントローラー中央下部に配置された大型のジョグダイヤルです。このダイヤルは、両手でコントローラーを握った際に親指が自然に届く位置に設計されています。従来の方向キーやアナログスティックとは全く異なる、回転操作による入力方法を採用しています。

このジョグダイヤルは、単に回転入力を受け付けるだけでなく、ゲーム内の状況に応じて応答する「反発力」を備えていました。これは、本格的なステアリングコントローラーが持つようなフォースフィードバック機能の一種であり、例えばレースゲームであれば、カーブを曲がる際の抵抗感や、路面の凹凸などがダイヤルの反発として指先に伝わることで、より臨場感のある操作体験を実現しました。これにより、プレイヤーはまるで実際の車両を操作しているかのような、これまでにない独特の感覚でゲームに没入することができたのです。

互換性と電源

ジョグコンは、初期型のPlayStationに同梱されていた標準コントローラーとは完全な互換性を持っており、ジョグコンを接続すれば、標準コントローラー対応のゲームを基本的なボタン操作でプレイすることも可能でした。しかし、後に普及したDUALSHOCKコントローラーに搭載された左右のアナログスティック機能には対応しておらず、アナログスティックが必須となるゲームでは使用できませんでした。

また、ジョグコンは別途電源を用意する必要がありませんでした。PlayStation本体との接続ケーブルを通じて電力が供給される仕組みになっており、利便性の高い設計となっていました。電池交換の手間なども不要でした。

対応ソフトウェア

この特別な操作性を最大限に活かせるよう設計されたジョグコンですが、対応するゲームタイトルは残念ながらそれほど多くはありませんでした。最も代表的なタイトルは、ジョグコン本体と同時期に発売されたナムコの人気レースゲームシリーズの新作、『R4 -RIDGE RACER TYPE 4-』です。このタイトルでは、ジョグコンを使用することで、ドリフト操作などが従来のコントローラーとは一味違う、独特の感覚で楽しめました。

その他にも、一部のゲームがジョグコンの操作に対応していました。例えば、『パックマンワールド 20thアニバーサリー』では、ジョグダイヤルを使った特殊なアクションに利用されていました。また、PlayStation 2向けに発売されたシリーズ最新作『リッジレーサーV』もジョグコンに対応しており、後継機種でもそのユニークな操作感を体験することができました。これらの対応タイトル以外では、基本的に標準コントローラーとして認識されるため、ジョグダイヤルのフォースフィードバック機能などは活かされませんでした。

意義

ジョグコンは、PlayStationの周辺機器として、特定のゲームジャンル、特にレースゲームにおいて、それまでのコントローラーにはない新しい操作体験を提供しようというナムコの試みでした。対応タイトルの少なさから普及は限定的でしたが、その革新的なジョグダイヤルとフォースフィードバック機能は、多くのユーザーに強い印象を残しました。ゲーム操作の可能性を広げるユニークなコントローラーとして、ゲームハードウェア史において記憶されるべき存在と言えるでしょう。

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