ジョゼフ・F・エンライト

ジョゼフ・フランシス・エンライト：信濃を撃沈した男

ジョゼフ・フランシス・エンライト（1910年9月18日-2000年7月20日）は、アメリカ海軍を代表する潜水艦艦長の一人であり、第二次世界大戦における日本海軍航空母艦「信濃」撃沈で知られています。ノースダコタ州マイノットの生まれで、1933年にアメリカ海軍兵学校（アナポリス）を卒業。同期の卒業生には、後に著名な海軍軍人となる者も多くいました。卒業後は戦艦に勤務した後、1936年からは潜水艦乗組員としてキャリアを積むことになります。

潜水艦艦長としての初期のキャリア

エンライトは、太平洋戦争勃発後の1942年6月、潜水艦O-10の艦長として初めて艦長職に就きました。その後、1943年7月には少佐に昇進し、最新鋭の潜水艦「デイス」の艦長に就任。デイスでの最初の哨戒任務では、翔鶴撃沈の指令を受けながらも、規定を遵守した結果、翔鶴を逃すことになります。この任務での成果は限定的でしたが、後にエンライト自身の規律正しさ、そして経験を積む上で重要な役割を果たしました。続く任務では、爆雷攻撃を受けて損傷を負うなど、危険な状況も経験しました。デイスでの任務を終えたエンライトは、司令部への報告で自己批判を行い、自身の責任を認め、デスクワークを志願。この姿勢は上級司令官に評価され、潜水艦救護隊隊長に異動、その後中佐に昇進しました。

信濃撃沈

1944年9月、エンライトは大型の潜水艦「アーチャーフィッシュ」の艦長に就任します。同年10月30日に5回目の哨戒任務を開始。哨戒任務の途上で、B-29爆撃機の支援任務に就いた後、11月28日夜、レーダーと目視で複数の目標を発見。その目標こそが、最新鋭の航空母艦信濃と護衛の駆逐艦数隻でした。信濃は一度は遠ざかったものの、11月29日午前3時頃、アーチャーフィッシュの方向に転進。エンライトは、午前3時18分に6本の魚雷を発射、そのうち4本が信濃に命中しました。信濃は約7時間後に沈没。アメリカ海軍にとって大きな勝利となりました。信濃の撃沈は、アメリカ海軍にとって大きな戦果であり、エンライトは海軍十字章と部隊感状を授与されました。しかし、信濃の正確な艦種は当初不明であったため、報告に混乱が生じ、戦果認定に時間がかかりました。

戦後と晩年

終戦は北海道沖で迎え、エンライトはアーチャーフィッシュ乗組員とともに日本の降伏文書調印式に参列しました。戦後はアナポリスで教官を務めた後、様々な要職を歴任。1952年には大佐に昇進し、海軍作戦部勤務となりました。潜水艦関連の職務に携わった後、1959年から1963年までミサイル巡洋艦ボストンの艦長を務め、大佐で退役しました。退役後は、マサチューセッツ州ドーバーに移住し、ノースロップ社でオメガ航法の研究開発に従事。1987年には自らの回想録『SHINANO！ The Sinking of Japan Secret Supership』を出版しました。2000年7月20日、バージニア州フェアファックスの自宅で89歳で亡くなり、アーリントン国立墓地に埋葬されています。

エンライトの生涯は、規律正しさ、責任感、そして卓越した指揮能力を兼ね備えたアメリカ海軍軍人の物語として、今も語り継がれています。信濃撃沈という偉業は、彼の生涯における最大の功績として記憶され続けています。彼の功績は、アメリカ海軍史、ひいては第二次世界大戦史において、重要な一頁を飾るものです。彼の回想録は、当時の状況や、彼の個人的な感情を詳細に記録した貴重な資料となっています。

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