ジョゼフ＝ニコラ・ロベール＝フルーリー

ジョゼフ＝ニコラ・ロベール＝フルーリー（Joseph-Nicolas Robert-Fleury, 1797年8月8日 - 1890年5月5日）は、ドイツのケルンで生まれ、主にフランスで活動した画家です。歴史画を得意とし、その作品は19世紀のフランス美術界において重要な位置を占めています。

生涯

ロベール＝フルーリーは、幼少期をケルンで過ごした後、パリに移り住み、本格的に絵画の道へ進みました。彼は、オラース・ヴェルネ、アンヌ＝ルイ・ジロデ・ド・ルシー＝トリオゾン、アントワーヌ＝ジャン・グロといった当時の著名な画家の指導を受け、多様な画風と技術を習得しました。また、イタリアやオランダへの旅を通じて、古典美術や他の文化圏の芸術にも触れ、自身の芸術観を深めました。

1824年、ロベール＝フルーリーはサロン・ド・パリに初めて作品を出展しますが、当初はすぐに評価を得るには至りませんでした。しかし、その後3年ほどの間に彼の才能は認められ、次第に評価を高めていきました。

1850年、ロベール＝フルーリーはフランスの芸術アカデミーの会員に選出されました。これは、彼の画家としての卓越した能力と貢献が広く認められた証と言えるでしょう。その後、彼は後進の育成にも力を注ぎ、1855年からパリ国立高等美術学校（エコール・デ・ボザール）で教鞭を執り始めました。1863年には同校の校長に就任し、フランス美術界における教育者としての地位を確立しました。

さらに、1866年から1867年には、ローマの在ローマ・フランス・アカデミーの校長も務め、国際的な美術交流にも貢献しました。1867年にはレジオンドヌール勲章（コマンドゥール）を受勲し、彼の功績はフランス政府からも高く評価されました。

彼の息子であるトニ・ロベール＝フルーリーもまた画家であり、美術教師として活躍し、父の芸術的遺産を受け継ぎました。

作品の特徴

ロベール＝フルーリーの作品は、歴史的な出来事をドラマティックに描いたものが多く、細部まで丁寧に描写された写実的な画風が特徴です。彼の歴史画は、単なる過去の再現ではなく、人間の感情やドラマを深く掘り下げて表現しており、観る者に強い印象を与えます。

彼の作品は、以下のようなものが知られています。

「宗教改革の始まり」
「16世紀の芸術家たち」
「聖バルテルミーの虐殺」
「コルドバの総督」
「ガリレオの裁判」

これらの作品は、歴史的な出来事を題材としながらも、人間の普遍的な感情や倫理的な問題を深く掘り下げており、観る者に深い感動を与えます。

美術教育への貢献

ロベール＝フルーリーは、画家としての活動だけでなく、教育者としても大きな功績を残しました。パリ国立高等美術学校の校長として、多くの学生を育成し、フランス美術の発展に貢献しました。彼の指導を受けた学生の中には、後に著名な画家となった者も少なくありません。彼の教育に対する情熱は、フランス美術界に大きな影響を与え、後世に語り継がれています。

参考文献

Encyclopédie Larousse: Joseph Nicolas Robert Fleury
Oxford Art on line: Robert-Fleury
H. Jouin: Robert-Fleury (Paris, 1890)
* E. Montrosier: Peintres modernes: Ingres, H. Flandrin, Robert-Fleury (Paris, 1882), pp. 73–143

もう一度検索