ジョッキークラブ

イギリス・ジョッキークラブ：近代競馬を築いた250年の歴史

イギリスのジョッキークラブは、1750年頃にロンドンで設立された、競馬に関するあらゆる業務を統括してきた組織です。当初は貴族たちの競馬同好会のような存在でしたが、徐々にその影響力を拡大していきました。

1758年には、後検量を義務付ける最初の命令を発布し、1762年には騎手の服飾登録に関する命令を出すなど、積極的に競馬のルール整備を進めました。18世紀末頃には、近代競馬の基礎となる制度や規則をほぼ確立し、ジェームズ・ウェザビーに委託してレーシングカレンダーやジェネラルスタッドブック（競走馬の血統登録簿）を刊行することで、競馬の成績や血統に関する記録の統一と整備にも大きく貢献しました。

ジョッキークラブの権威は、1791年のエスケープ事件における、当時の皇太子ジョージ4世に対する毅然とした態度によって高まりました。この事件で不正行為に妥協しなかったことで、ジョッキークラブは高い信頼と権威を獲得し、19世紀半ばまでには、イギリス全国の競馬場でその規則が広く受け入れられるようになりました。

私的団体として長らくイギリス競馬を統括してきたジョッキークラブは、1970年にロイヤルチャーター（王室勅許）を得て法人格を取得しました。しかし、法的根拠が求められるようになったことで、1993年には英国競馬公社（BHB）に、懲罰部門などを除く統括権限を移譲しました。さらに2006年には、残りの権限も競馬監理機構（HRA）に移譲し、約250年にわたる競馬統括業務から完全に手を引きました。その後、2007年には英国競馬統括機構（BHA）が設立され、BHBとHRAは消滅、ジョッキークラブの業務はBHAに統合されました。

ジョッキークラブは、競馬場の管理運営、調教施設の管理、競馬関係者への福祉事業など、幅広い活動を行っていました。これらの業務は、主に子会社であるJockey Club Racecourses、Jockey Club Estates、Racing Welfareを通じて行われていました。13の競馬場の管理運営やニューマーケットの調教施設の管理などもその業務に含まれていました。

2014年には、日本中央[[競馬会]]（JRA）から「JRA賞馬事文化賞・功労賞」を受賞しました。これは、長年門外不出とされてきたジョッキークラブ所蔵の競馬絵画10点を、東京[[競馬場]]の競馬博物館で特別公開したことが評価されたものです。これらの絵画は、競馬の歴史的・美術的な価値が高く、日本の馬事文化の振興に大きく貢献したと認められました。この受賞は、JRAとジョッキークラブの長きにわたる友好関係を象徴する出来事でもありました。

ジョッキークラブは、近代イギリス競馬の基礎を築き、発展に大きく貢献した組織として、その歴史的意義は非常に大きいと言えるでしょう。その活動は、単なる競馬の統括にとどまらず、イギリスの社会文化にも大きな影響を与えてきました。現在ではその統括機能は他の組織に移譲されていますが、その歴史的功績は今後も語り継がれていくことでしょう。

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