ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ

ジョニー・キッド＆ザ・パイレーツ：イギリス ロックンロールの歴史に刻まれた海賊たち

ジョニー・キッド＆ザ・パイレーツは、1950年代後半から1960年代にかけてイギリスで活躍したロックンロールバンドです。リーダーであるジョニー・キッド（本名フレデリック・ヒース）率いるこのバンドは、海賊をモチーフにした衣装と、ダイナミックなステージパフォーマンスで人気を博しました。ビートルズやローリング・ストーンズが台頭する以前から、イギリスロックンロールシーンを牽引した重要なグループの一つと言えるでしょう。

1950年代後半：華々しいデビューと革新的なサウンド

1959年、ウォルター・J・リドリーの支援の下、HMVと契約を結びデビューを果たします。5月にリリースされたデビューシングル「プリーズ・ドント・タッチ」は、イギリスのシングルチャートで25位を記録するヒットとなりました。

この成功を機に、バンドはサウンドとビジュアル両面での更なる進化を目指します。ステージでは、ジョニー・キッドを中心に、ギターのアラン・キャディとベースのブライアン・グレッグがキッドに楽器で襲いかかろうとするパフォーマンスを繰り広げ、キッドはドラムのリズムに合わせてハイキックで彼らを蹴散らすという、ダイナミックな演出を取り入れました。サウンド面では、当時としてはまだ珍しかったエコーユニットをマイクに導入することで、奥行きのあるボーカルを実現しました。また、1959年から1961年にかけてはサタデークラブで演奏活動を行い、4人のメンバーに加え、マイク・ウェストとトム・ブラウンによるバックアップコーラスも加わって、バンドの表現力を高めていきました。

1960年にはシングル「シェイキン・オール・オーヴァー」がUKチャートで1位を獲得。この曲は、後のザ・フーによるライブパフォーマンスでも有名になり、「ブリティッシュロックのクラシック」と称賛されました。特徴的なスライドギターの音色は、ゲストミュージシャンであるジョー・モレッティがタバコのライターを用いて奏でたものと言われています。その後も数々のシングルを発表しましたが、「シェイキン・オール・オーヴァー」の圧倒的な人気により、それらの作品は影に隠れてしまうことになります。「プリーズ・ドント・レット・ミー・ダウン」や「ソー・ホワット」などのシングルも、イギリスのマイナーロッククラシックとして現在でも評価されています。

黄金メンバー時代：進化するステージとサウンド

初期メンバーのカッティーニ、キャディ、ブライアン・グレッグがジョー・ミークのトルネードスに移籍した後も、ジョニー・キッドはソロ活動と新メンバーの加入によりバンドを継続しました。ジョニー・スペンス（ベース）、フランク・ファーレイ（ドラムス）、そして後にミック・グリーン（ギター）といった新たなメンバーが加わり、バンドは黄金期を迎えます。

この新ラインナップでの最初のシングル「ア・ショット・オブ・リズム・アンド・ブルース」は、1962年末にチャート入りを果たしましたが、大きなヒットとはなりませんでした。しかし、彼らのステージングは進化を続け、視覚効果の高いパフォーマンスが確立されます。巨大なガレオン船の背景に、19世紀の海賊コスチュームに身を包んだキッドはステージを縦横無尽に動き回り、その激しさは、クラブのステージを損傷させ、保険会社から修理費用の支払いを拒否されるほどでした。ドイツツアーを経て、バンドのサウンドは更に洗練されていきます。1963年夏には「アイル・ネヴァー・ゲット・オーヴァー・ユー」がチャート4位にランクインし、続く「ハングリー・フォー・ラヴ」もトップ20入りを果たしました。

解散とジョニー・キッドの死：伝説の終焉

1964年、ミック・グリーンがビリー・J・クレイマー＆ザ・ダコタスに移籍し、バンドは再びヒットから遠ざかります。後任にジョン・ワイダーが加わり、オルガン奏者としてヴィク・クーパーも加入しますが、待望されたデビューアルバムはリリースされませんでした。最終的に、ジョニー・キッドとパイレーツは解散し、パイレーツはシングル「青い影」をリリースして活動を停止しました。1966年、キッドは新たなメンバーと共にニュー・パイレーツを結成し、復活を目指しましたが、同年10月7日、交通事故で30歳の若さで亡くなりました。

再結成とミック・グリーンの死：不滅の音楽

ジョニー・キッドの死後、最盛期のメンバーであるジョニー・スペンス、フランク・ファーレイ、ミック・グリーンは1976年にザ・パイレーツとして再結成を果たしました。1977年にはフロント・ロウ・フェスティバルに出演し、その模様はライブアルバムとしてリリースされました。再結成後もライブ活動や新作レコーディングを行い、1978年にはアルバム『Out of Our Skulls』を発表しました。公式には1980年代半ばに活動を停止しましたが、機会を見つけては演奏活動を続けました。しかし、2010年にミック・グリーンが亡くなり、バンドは活動を完全に終了しました。

ジョニー・キッド＆ザ・パイレーツの音楽は、今日でも多くのアーティストに影響を与え続け、彼らの残した楽曲は、ロックンロール史に燦然と輝く金字塔として輝き続けています。彼らの海賊を思わせるパフォーマンスと、力強い音楽は、これからも多くのファンを魅了し続けることでしょう。

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