ジョニー・タピア

ジョニー・タピア

ジョニー・タピア（Johnny Tapia、1967年2月13日 - 2012年5月27日）は、アメリカ合衆国ニューメキシコ州アルバカーキ出身のプロボクサー。身長168cm。世界スーパーフライ級、バンタム級、フェザー級の3階級で世界タイトルを獲得した偉大なチャンピオンである。しかし、彼の人生は「Mi Vida Loca（私の狂った人生）」と自ら称するように、リング上の栄光とは裏腹に、悲劇と困難に満ちたものだった。

壮絶な生い立ちとプロキャリアの始まり

タピアは、妊娠中の母親が父親を射殺されるという衝撃的な事件の中で生まれた。さらに追い打ちをかけるように、彼がわずか8歳の時には母親が誘拐され、凄惨な方法で命を奪われるという悲劇に見舞われた。このような極めて厳しい環境の中で育った彼は、ボクシングに活路を見出した。

1988年3月28日にプロデビューを飾るが、この初戦は引き分けに終わる。しかし、その後は連勝を重ね、才能を開花させていった。1990年5月10日、USBA全米スーパーフライ級王座決定戦でローランド・ゴメスを11回TKOで破り、キャリア初のタイトルを獲得。この王座を4度防衛するなど、国内で確固たる地位を築いた。

世界王座獲得と薬物問題

順調にキャリアを積み上げていたタピアだったが、私生活では薬物依存という深刻な問題に直面する。コカインの使用が発覚し、プロボクサーとしての資格を3年間停止されるという大きな挫折を経験した。しかし、彼はこの困難を乗り越え、1994年3月27日にリングへ復帰した。

復帰後、1994年7月15日にNABF北米スーパーフライ級王座を獲得し、再びトップ戦線へ浮上。同年10月12日には、WBO世界スーパーフライ級王座決定戦でヘンリー・マルチネスを11回TKOで下し、遂に悲願の世界王座を獲得した。この王座を実に10度も防衛するという離れ業を演じ、スーパーフライ級のトップとして君臨した。

統一王者へ、そして多階級制覇

1997年7月18日、タピアにとってキャリア最大の試合の一つが行われた。故郷アルバカーキのライバルであり、IBF世界スーパーフライ級王者であったダニー・ロメロとの王座統一戦である。この注目の一戦を3-0の判定で制し、IBF王座を獲得するとともにWBO王座11度目の防衛にも成功。スーパーフライ級の頂点に立った。その後、WBO王座を合計13度、IBF王座を2度防衛している。

スーパーフライ級で圧倒的な強さを見せたタピアは、階級を上げて新たな挑戦に乗り出した。1998年12月5日、WBA世界バンタム級王者のナナ・コナドゥに挑み、2-0の判定勝ちで2階級制覇を達成した。スーパーフライ級の二つの世界王座はこの後返上された。

しかし、1999年6月26日、バンタム級初防衛戦でポーリー・アヤラに0-3の判定負けを喫し、プロキャリア初の黒星（49戦46勝1敗2分け）を記録すると同時に王座を失った。この敗戦後、再び薬物の過剰摂取により自殺未遂を起こし、入院するなど人生の暗闇を彷徨った。

それでもタピアはリングに戻ってきた。2000年1月8日にはWBO世界バンタム級王者ホルヘ・エリセール・フリオに勝利し、同王座を獲得。これは1度防衛後に返上した。

さらに階級を上げ、2002年4月27日にはIBF世界フェザー級王者マヌエル・メディナに挑戦。2-0の僅差判定で勝利し、3階級制覇を達成した。しかし、メディナとの再戦を拒否し、マルコ・アントニオ・バレラとの対戦を選んだため、同年9月30日にIBF王座を剥奪されてしまう。バレラとは同年11月2日に対戦したが、判定負けを喫した。

波乱の晩年と早すぎる死

リング上での輝かしい実績とは裏腹に、タピアは引退後も私生活での問題が続いた。薬物依存との闘いは生涯続き、何度か逮捕や入院を繰り返した。2006年には自叙伝「Mi Vida Loca」を出版し、その壮絶な人生を赤裸々に語っている。

2007年2月23日に故郷アルバカーキで引退試合を行った後も、薬物の問題から入院するなど平穏な生活を送ることは難しかった。一時的な復帰戦の計画もあったものの実現せず、再び薬物関連で拘留されることもあった。

2010年には約3年ぶりにリングに復帰し、数試合を行った。しかし、彼の苦闘は終わらなかった。2012年5月27日、ジョニー・タピアはアルバカーキの自宅で遺体となって発見された。45歳というあまりにも早すぎる死だった。死因は特定されていないが、薬物関連が疑われた。

ジョニー・タピアの人生は、ボクシングの才能と数々の栄光、そして壮絶な生い立ちと私生活の苦難が複雑に絡み合ったものだった。リング上の「El Vida Loca（狂った人生）」は、多くのファンを魅了し、彼の伝説は今も語り継がれている。

獲得タイトル
WBO世界スーパーフライ級王座（防衛13度）
IBF世界スーパーフライ級王座（防衛2度）
WBA世界バンタム級王座（防衛0度）
IBF世界フェザー級王座（防衛0度）

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