ジョン・イーヴリン

ジョン・イーヴリン：17世紀イングランドの多面的な才能

ジョン・イーヴリン(1620年10月31日-1706年2月27日)は、イングランドの作家、造園家、そして日記作者として知られる、17世紀を代表する人物の一人です。サミュエル・ピープスの日記と並ぶ、当時の社会状況、文化、政治を理解するための貴重な一次資料を残しました。

激動の時代を生き抜いた生涯

裕福な火薬製造業者の家に生まれたイーヴリンは、オックスフォード大学と法律学校で教育を受けました。ロンドン滞在中には、ストラフォード伯の処刑など歴史的事件を目の当たりにしました。イングランド内戦時には、王党派に一時加わったものの、海外に亡命。イタリアへの旅行ではパドヴァ大学で解剖学を学び、標本をロンドンに送るなど、学問にも熱心に取り組んでいました。


1647年、フランス大使の娘メアリと結婚。1652年にはロンドン近郊に居を構え、庭園の造営に情熱を注ぎました。この庭園では、のちに有名な彫刻家となるグリンリング・ギボンズとも出会っています。


王政復古後、イーヴリンは王立協会の創立メンバーとなり、積極的に社会活動に参加しました。ロンドンの大気汚染問題を扱った『Fumifugium』や、植林の重要性を説いた『Sylva』など、数々の著作を発表。特に『Sylva』は、イギリス海軍の造船に必要な木材確保の観点から、植林を推進する内容で、彼の造園家としての知識と社会貢献への意識の高さを示しています。


ロンドン大火後には、ロンドンの再建計画も提案しましたが、採用されませんでした。しかし、彼の造園技術は高く評価されており、多くの庭園設計を手掛けました。

多彩な才能と知的好奇心

イーヴリンの著作は、神学、コイン収集、政治、園芸、建築、菜食主義など、多岐に渡り、幅広い知識と旺盛な知的好奇心を示しています。彼は生涯にわたり読書を続け、膨大な蔵書を残しました。そのコレクションには、フランス式の装丁が施され、彼のモットー「Omnia explorate; meliora retinete（全てを探求し、ベストを尽くす）」が記されていたと言われています。


彼の娘マリアは、匿名で出版された詩の解説書『Mundus Muliebris』の作者と推測されています。


晩年はウォットンに戻り、最愛の孫を残して息子の死を経験します。有名な借家人の一人として、ピョートル大帝が彼の邸宅に滞在したことも知られています。


1706年、ロンドンで死去。妻と並んで、ウォットンの教会に埋葬されましたが、1992年には墓が暴かれ、頭蓋骨が盗まれるという事件が発生しました。

現代への遺産

イーヴリンの日記や手稿は、大英図書館などに保管され、現代においても研究者の重要な資料となっています。ヴィクトリア＆アルバート博物館には、イーヴリンが所有していた飾り棚も保存されています。


近年でも、彼の生涯や業績に関する新たな伝記が出版されるなど、今もなお彼の遺産は多くの人々に影響を与え続けています。


ジョン・イーヴリンは、単なる日記作者や造園家を超えた、17世紀イングランドの知的な象徴的存在と言えるでしょう。彼の残した記録は、現代社会においても、歴史、文化、環境問題など、様々な分野への示唆を与え続けています。彼の多様な才能と、激動の時代を生き抜いた経験は、現代社会に生きる私たちにとっても、大きな学びを与えてくれるものです。

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