ジョン・コックラム

ジョン・コックラムは、18世紀初頭に活動したイギリス出身の海賊であり、生没年については詳しい記録が残されていません。彼はバハマ諸島に栄えた海賊たちの自治組織、通称「海賊共和国」の一員であり、その後の人生では海賊を取り締まる側に回るという稀有な経歴をたどりました。

コックラムの活動が歴史に現れるのは1713年頃からです。当時、彼は著名な海賊ベンジャミン・ホーニゴールドの一味に加わっており、バハマ周辺でスペインの小型船などを襲撃していました。ホーニゴールドは、コックラムとジョン・ウェストという二人の仲間に小型のカヌーであるピローグを任せ、それぞれ略奪を行わせました。コックラムたちはフロリダ沖で座礁した船から、金品や物資など2,000ポンドを超える財産を奪取し、一方のウェストは奴隷14人を強奪したと記録されています。

ホーニゴールド一味は、略奪品を現金化するためにハーバー島の商人リチャード・トンプソンと取引を行いました。トンプソンは海賊が持ち込む品物を積極的に買い取る、いわば闇業者でした。特にコックラムはトンプソンと親密な関係を築き、1714年3月頃にはトンプソンの娘と結婚し、エルーセラ島へ移り住みました。トンプソンとコックラムの結びつきは非常に強く、トンプソンは自身の所有するスループ船をコックラムに預け、キュラソー島との間でログウッドの密輸取引を行わせるほどでした。このように、彼らはバハマ諸島において、海賊が奪った品物を流通させる非合法なネットワークの一端を担っていました。

1717年9月、イギリス国王ジョージ1世は、翌1718年9月までに投降した全ての海賊に恩赦を与えるという布告を発令しました。これを受けて、コックラム、ホーニゴールド、ヘンリー・ジェニングス、ジョサイア・バージェスなど、多くの海賊たちが海賊稼業から足を洗い、恩赦を受け入れました。しかし、悪名高かったチャールズ・ヴェインだけは例外でした。ヴェインは、新しい植民地総督ウッズ・ロジャーズがナッソーに入港するやいなや、港に停泊していた海軍艦艇に砲撃を浴びせ、逃走するという挑発的な行動に出ました。しばらくして、ヴェインがアバコ島のグリーンタートルに潜伏しているという情報を得たロジャーズ総督は、恩赦組であるコックラムとホーニゴールドに武装したスループ船を与え、ヴェイン討伐に向かわせました。しかし、両者はヴェイン本人を捕捉することはできませんでした。代わりに、ヴェインと非合法な取引を行っていた疑いのあるニコラス・ウッドオール船長の船「ウルフ号」を捕獲し、プロビデンス島へ連行しました。ウルフ号は総督によって没収され、ウッドオール船長は投獄されました。

コックラムは1720年頃までロジャーズ総督のもとで活動を続けました。1721年には総督の評議会議員に任命され、公職に就きます。しかし、1726年、借金の取り立てから逃れるため、島から姿を消しました。これにより、彼は評議会のメンバーから除名され、その後の正確な消息は途絶えています。

フィクションにおいては、『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』にナッソーの海賊として登場しますが、作中では史実と異なり、後にホーニゴールドやバージェスと共にテンプル騎士団側につく設定になっています。

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