チャールズ・ヴェイン

イギリス出身の海賊、チャールズ・ヴェイン（Charles Vane、1680年頃 - 1720年 3月29日）は、カリブ海を中心に活動し、その活動期間は主に1716年から1720年まででした。バハマのニュープロビデンス島、特にナッソーを拠点とし、イギリス船やフランス船などを標的としました。海賊共和国と呼ばれたナッソーの自由を謳歌しましたが、最終的には捕らえられ、ポート・ロイヤルの絞首台でその生涯を終えました。

初期キャリアと海賊共和国

ヴェインの生い立ちはほとんど知られていませんが、ロンドン出身とされ、スペイン継承戦争中にポート・ロイヤルへ渡ったと考えられています。海賊としてのキャリアは、ヘンリー・ジェニングス率いる一味の部下として始まりました。1715年、フロリダ沖で難破したスペイン財宝船団からジェニングスらが財宝を奪った際、ヴェインも攻撃隊の一員として加わっていました。ジェニングスの一味はナッソーを拠点とし、ヴェインもここで略奪品を元手に気ままな暮らしを送り、初期の入植者たちを脅かす存在となりました。

王の恩赦とその拒否

1717年9月、イギリス国王ジョージ1世が海賊に対し、過去の罪を問わないという条件で恩赦を布告しました。この知らせがナッソーに届くと、海賊たちの間では意見が分かれました。ジェニングスやベンジャミン・ホーニゴールドらは恩赦の受け入れを支持しましたが、ジャコバイト支持者など国王に反感を抱く者たちはこれに激しく反発しました。ヴェインは後者のリーダー格となり、恩赦を受け入れようとするかつての師ジェニングスらに失望します。彼は密かにジャコバイト支持者へ支援を求め、イギリス軍から寝返ったジョージ・カモック艦長を通じてジャコバイトの軍艦派遣を依頼しました。

1718年1月、ジェニングスがバミューダ総督に投降するなど、多くの海賊が各地へ散らばる中、ヴェインは数名の仲間と共にスループ船「ラーク号」を入手し、海賊船として整備しました。2月にはイギリス海軍のフェニックス号が恩赦布告を伝えにナッソーへ到着。島に残っていた恩赦支持者の情報により、ヴェインは拘束されますが、島の平穏を望む海賊たちの進言により釈放されました。しかし、これは大きな過ちでした。ヴェインは釈放後すぐに海賊行為を再開。港の入り口を密かに抜け出し、貿易船を拿捕。ナッソー港で海賊旗を掲げ、軍艦に見せつけるように略奪を行うという侮辱的な行動に出ました。フェニックス号からの討伐隊を撃退し、港の住民から補給を受けるなど、その勢いは増しました。迂闊にも海軍に没収されていた「ラーク号」も奪い返し、仲間を増やしたヴェインはナッソーから外洋へと脱出しました。

ウッズ・ロジャーズ 総督との対決と活動拡大

ナッソーを脱出した後、ヴェインはバハマ周辺海域でその残酷さで悪名を轟かせました。捕虜への拷問や虐待は常軌を逸しており、特にバミューダ船の船員に対しては容赦がありませんでした。例えば、捕虜を目隠しし、目の近くで燃えるマッチをちらつかせながら尋問したと言われています。ヴェインは次々と船を奪い乗り換え、高速スループ船「レンジャー」を旗艦としました。8月にはサウスカロライナのチャールストン港を封鎖し、多数の船を略奪しました。しかし、部下への横柄な態度から、チャールズ・イェーツ船長が離反するという出来事も起こりました。サウスカロライナ総督が派遣した追手もうまくかわし、ヴェインは勢力を保ちました。

ティーチとの交流と没落

10月、ヴェインはノースカロライナのオクラコーク島で、悪名高き黒髭ことエドワード・ティーチと再会しました。両者は祝砲を交わし、一週間にわたる祝宴を開いたと言われています。その後、ヴェインはバハマ方面へ戻りました。

しかし、ヴェインの最期は近づいていました。11月、フランス軍艦との遭遇時に逃亡を主張したことが、乗組員に臆病と見なされ、投票によって船長の地位を追放されました。操舵手だったジャック・ラカムが新たな船長となり、ヴェインを含む15名は小さなスループ船に乗せられ追放されました。再起を図り海賊行為を続けましたが、1719年2月、ヴェインの船は嵐で難破し、ホンジュラス湾の無人島に漂着しました。数ヶ月後、偶然通りかかった船の船長は、かつて海賊だったヴェインの顔見知りホルフォードでしたが、彼はヴェインを見捨てて去りました。その後、別の船に救助されますが、その船長がホルフォードの知人であったため、ヴェインの正体が露見。足かせをはめられてジャマイカに連行されました。裁判の結果、チャールズ・ヴェインは1720年 3月29日にポート・ロイヤルで絞首刑に処されました。彼は最期まで罪を悔いる言葉を口にしなかったと言われています。

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