ジョン・コプラリオ

ジョン・コプラリオ（John Coperario、1570年頃 - 1626年）は、エリザベス朝末期からステュアート朝初期にかけてのイングランド音楽界で活躍した、影響力のある作曲家およびヴィオラ・ダ・ガンバやリュートといった弦楽器の優れた奏者でした。

彼の本名はジョン・クーパー（John Cooper）でしたが、17世紀初頭にイタリア文化への深い傾倒から、自身の名前をイタリア語風のジョヴァンニ・コプラリオ（Giovanni Coprario）へと改めました。現在では、ジョン・コプラリオ、あるいは単にコプラリオとして広く知られています。

経歴

コプラリオのキャリアにおいて、宮廷での活動は重要な位置を占めていました。彼は王室の楽師として、演奏の腕前を披露しました。特に、後のイングランド王となるチャールズ1世（当時は皇太子）の音楽教師を務めた可能性が指摘されており、チャールズが即位した際にはその任務に就いていたことが確認されています。このことから、コプラリオが王室から厚い信頼を得ていたことがうかがえます。

また、彼は長きにわたり、当時の貴族であるハートフォード伯エドワード・セイマーの庇護を受けました。ハートフォード伯のために、コプラリオは後に名高いヴァイオリニストとなるウィリアム・ローズの指導にあたっています。

姓をイタリア風に改名した後、コプラリオが実際にイタリアへ渡ったという説が古くから存在しますが、この旅行を裏付ける確実な文書史料は今のところ見つかっていません。

作品

作曲家として、コプラリオは多岐にわたるジャンルで才能を発揮しました。彼の作品として最もよく知られているのは、

緻密な対位法を用いた幻想曲（Fantasia）
複数の楽章からなるセット（Set）
ヴィオラ・ダ・ガンバやヴァイオリンといった楽器のために書かれた器楽曲

これらの器楽曲は、当時のイングランドにおける室内楽の重要なレパートリーを形成しています。彼の作品はしばしば、洗練された旋律と構造的な工夫に満ちています。

声楽曲の分野でも、コプラリオは noteworthy な作品を残しました。特に以下の2冊の歌曲集は有名です。

『葬儀の涙（Funeral Teares）』 (1606年):
* 『挽歌（Songs of Mourning: Bewailing the Untimely Death of Prince Henry）』 (1613年): 早世した皇太子ヘンリーを悼んで作曲された哀悼歌集。

これらの歌曲集は、当時のイングランドで流行したリュート歌曲やコンソート・ソングといったスタイルに貢献しています。

さらに、コプラリオは音楽理論家としても活動しており、作曲法に関する重要な論文『作曲の法則（Rules how to Compose）』を執筆しました。この著作は、ルネサンス末期からバロック初期にかけての作曲技法に関する貴重な洞察を提供しており、後世の研究者にとって重要な資料となっています。

ジョン・コプラリオは、演奏家、作曲家、教師、そして理論家として、当時のイングランド音楽界において多角的な貢献を果たしました。彼の残した作品、特にヴィオラ・ダ・ガンバのための楽曲は、現在も演奏や研究の対象となっており、17世紀初頭のイングランド音楽の豊かさを示す証拠となっています。彼の生涯には不明瞭な点も一部ありますが、その創造性は間違いなく後世に大きな足跡を残しました。

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