ウィリアム・ローズ

ウィリアム・ローズは、17世紀初頭のイングランドに生を受けた作曲家であり、兄ヘンリーと共に宮廷に仕えた優れた楽師でした。1602年5月1日にソールズベリーで洗礼を受け、1645年9月24日、イングランド内戦中にチェスター近郊のロウトン・ヒースで戦没しました。

ソールズベリー大聖堂の聖歌助手であったトマス・ローズの次男として生まれたウィリアムは、若い頃から音楽の才能を示しました。ハートフォード伯エドワード・セイマーの支援を受け、高名な作曲家ジョン・コプラリオに音楽を学びました。この縁から、早くから当時の皇太子チャールズ（後のチャールズ1世）と接する機会に恵まれたと考えられています。

皇太子がチャールズ1世として即位すると、ウィリアムは兄ヘンリーと共に宮廷楽団の一員となりました。1635年には、リュート奏者と声楽家を兼任する常勤の音楽家に任命されますが、それ以前から既に宮廷のための楽曲制作に携わっていました。ローズは生涯を通じて宮廷での音楽活動に専念し、多様な依頼に応じました。

王室や貴族の娯楽のために、世俗的な楽曲や当時流行していたマスク劇で使用される歌曲を多数作曲し、おそらく自身もその演奏に加わったと推測されます。さらに、チャールズ1世の礼拝堂のために、アンセムやモテットといった厳粛な宗教音楽も手掛け、その多才ぶりを発揮しました。

現代において、ローズは主に3名から6名の奏者によるガンバ・コンソートのための緻密で独創的な組曲（セット）によって評価されています。彼のコンソート音楽は、高度な対位法やフーガの技法を巧みに用いる一方で、田園的な主題と予期せぬ風変わりで辛辣な響きを持つ主題を大胆に組み合わせる傾向がありました。この独特なスタイルは、彼の死後一時的に人気を失わせた要因の一つとなったようです。しかし、近年になって、特にイギリスの古楽器アンサンブルによる演奏や録音を通じて、彼のコンソート組曲は再評価され、再び聴かれる機会が増えています。

チャールズ1世と議会の対立が激化し、イングランド内戦が勃発すると、ウィリアム・ローズは熱心な王党派として王軍に加わりました。彼は戦場で身を危険に晒さないよう、近衛兵という比較的安全な任務に就いたとされています。しかし、にもかかわらず、議会派による戦闘の中で、王党派にとって大きな悲劇となる「不慮の死」を遂げました。

ローズの死は、王党派にとって大きな悲しみであり、彼の墓碑銘にはその無念さが込められています。特にその最後の句は、彼を殺した者たちが「意志こそ法である」と考える（王権神授説を否定する）者たちであったことを示唆する、痛烈な言葉遊びとなっています。「Will. Lawes was slain by such whose wills were laws.」という有名な句は、ウィリアム（Will）ローズ（Lawes）が、彼らの意志（wills）を法（laws）とする者たちによって殺された、という意味を含んでおり、王党派の悲痛な思いを伝えています。

ウィリアム・ローズの生涯は短く激動の時代に終わりましたが、彼の残した独創的なガンバ・コンソート音楽は、バロック初期イギリスの音楽遺産として重要な位置を占めており、現代においてその真価が再認識されています。

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