ジョン・シャーリー＝カーク

イギリスのバリトン歌手、ジョン・シャーリー＝カーク（1931年8月28日 - 2014年4月7日）は、現代オペラや歌曲の分野で国際的に活躍し、特にベンジャミン・ブリテン作品の主要な解釈者として知られています。リヴァプールで生まれた彼の初期の経歴は、他の著名な音楽家とは少し異なっていました。

ホルト高校の聖歌隊で声楽に触れましたが、若い頃はヴァイオリンに強く惹かれ、その演奏で奨学金を得てリヴァプール大学へ進学。ここでは化学と物理学という科学分野を専攻しました。しかし、並行して声楽の学習も続け、オーステン・カーネギーのもとで研鑽を積んでいました。

大学卒業後、アクトン専門学校で化学講師を務める傍ら、声楽家ロイ・ヘンダーソンの指導を受け、プロの道を志します。1961年、グラインドボーン音楽祭でハンス・ヴェルナー・ヘンツェのオペラ《若い恋人たちのエレジー》イギリス初演におけるグレゴール・ミッテンホーファー役を代役として見事に歌い上げ、これが彼の声楽家としての公式なデビューとなりました。

翌年にはクロード・ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》に出演し、さらにバッハの《クリスマス・オラトリオ》を歌ったことがきっかけで、作曲家ベンジャミン・ブリテンと出会います。この運命的な出会いは、シャーリー＝カークのその後のキャリアを大きく左右しました。ブリテンは彼の声と音楽性を高く評価し、多くの自作の重要な役を彼に任せるようになります。

1964年、ブリテン主宰のイギリス・オペラ・グループに参加し、ブリテンの教会オペラ《カーリュー・リヴァー》の渡し守役で高い評価を得ました。以後、彼はブリテン作品の世界的な歌い手として名を馳せます。1973年にはロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場、そして翌1974年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場でのブリテン最後のオペラ《ヴェニスに死す》公演に参加し、メトでの出演は彼のアメリカ・デビューとなりました。これらの舞台を通じて、国際的なキャリアを確固たるものとしました。

舞台活動に加え、音楽教育や組織運営にも貢献しました。1982年にはオールドバラ音楽祭の芸術副監督を務め、1991年からはボルティモアのピーポディ音楽院で長年にわたり後進の指導にあたりました。その多大な功績に対し、1975年には大英帝国勲章コマンダー（CBE）を授与されています。ジョン・シャーリー＝カークは2014年4月7日、82歳でバースにて死去しました。科学から音楽へと転じ、特にベンジャミン・ブリテン作品の普及と発展に大きく貢献した彼の業績は、今なお高く評価されています。

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