ジョン・タウンゼント (物理学者)

ジョン・シーリー・エドワード・タウンゼント(1868年6月7日-1957年2月16日)は、アイルランドで生まれた物理学者です。彼の研究は、主に気体の電気伝導と電離気体、つまりプラズマの分野に焦点を当て、現代物理学の発展に大きな影響を与えました。

タウンゼントは1885年にダブリンのトリニティ・カレッジで学び、その後1895年にイギリスへ渡り、ケンブリッジ大学でJ.J.トムソンのもとで研究を行いました。この時代は、物理学において革命的な発見が相次いだ時期であり、タウンゼントはトムソンの最初の大学院生の一人として、この隆盛期に重要な貢献を果たしました。彼の同期には、後にノーベル化学賞を受賞するアーネスト・ラザフォードがいました。

ケンブリッジ大学での研究生活において、タウンゼントは気体イオンの特性に注目しました。1897年、彼は電気分解によって生成された気体がイオン化しているという主張を行い、このイオンの電荷を測定するための装置を考案しました。そして1898年、この装置を用いて世界で初めて電子の電荷、つまり電気素量の測定に成功したのです。この成果は、原子構造の解明に大きく貢献し、物理学史に重要なマイルストーンとして刻まれました。

同じ1898年には、気体中でのイオン拡散の研究に着手しました。この研究から、低圧の気体中で起こる独特の放電現象を発見し、これは後に「タウンゼント放電」と呼ばれるようになりました。この現象の解明は、気体放電の理解を深める上で大きな一歩となりました。

1900年、タウンゼントはオックスフォード大学教授に就任しました。オックスフォードでも気体イオンに関する研究を継続し、衝突電離作用のα作用、β作用、γ作用といった現象を発見、衝突電離係数を決定しました。さらに、放電開始条件に関する研究も精力的に行いました。

第一次世界大戦中はイギリス海軍で電信の研究に従事しました。戦後はオックスフォード大学に戻り、研究活動に専念します。この間、電子の衝突断面積の測定を行い、ヘリウムやネオン以外の希ガス原子において、1電子ボルト付近で衝突断面積が非常に小さくなる現象を発見しました。この現象は、ほぼ同時期にカール・ラムザウアーも発見したため、「ラムザウアー・タウンゼント効果」と名付けられました。

タウンゼントは1903年に王立協会フェローに選出され、1941年にはナイトの称号を授与されました。オックスフォード大学を退職した後も、研究と教育活動を続け、その生涯を物理学の探求に捧げました。彼の業績を称え、換算電界の単位として「Td（タウンゼント）」が用いられています。換算電界とは、電界強度と気体の分子数密度（または圧力と温度）の比で表され、1Tdは1×10⁻¹⁷V・cm²です。

タウンゼントの研究は、現代のプラズマ物理学や原子物理学の基礎を築き、その後多くの研究者たちに大きな影響を与え続けました。彼の名前は、物理学の歴史に永遠に刻まれています。

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