北海道旧土人保護法

北海道旧土人保護法について

概要

北海道旧土人保護法は、1899年にアイヌ民族を「保護」するために制定された日本の法律です。法律の成立までには、江戸時代からのアイヌに対する差別的待遇や、明治維新後の政策の効果が十分でなかったことが背景にあります。政府はアイヌを貨幣経済に慣れさせようとしましたが、実効性は薄く、アイヌの生活基盤は脅かされていました。こうした経緯を受けて、加藤政之助が提案した保護法案が1883年に帝国議会で審議され、1899年に成立に至ったのです。

施行と改正

本法は、施行から頻繁に改正されました。主な改正は、大正8年（1919年）、昭和12年（1937年）、昭和21年（1946年）、昭和22年（1947年）、昭和43年（1968年）に行われました。

大正8年改正

1919年の改正では、6条で救助の対象に傷痍が加えられ、疾病に罹った者へ救療を行う規定が設けられました。

昭和12年改正

1937年の改正においては、アイヌへの無償土地提供、進学者への学資支援、住宅改築に対する補助金が新たに規定され、保護育成策が強化されました。この改正は、アイヌの自立支援を目指したものです。

昭和21年改正

1946年の改正により、生活保護法の施行を受けて本法の一部規定が削除され、アイヌ保護のための法的枠組みが変わっていきました。

昭和22年改正

1947年の改正でも、2条の2の規定が削除され、法体系の整備が進められました。

農地改革とその影響

1948年、農地改革が行われ、アイヌは土地を失うことになります。ただし、混住の機会によって自立を目指したアイヌも多く存在しました。これによってアイヌの社会経済的状況は一段と厳しくなりました。

法律の最終的な廃止

法律の名称や内容に対する抵抗の声が高まり、1970年代には廃止運動が活発化します。しかし、アイヌの権利を守る新たな法律がない中での全面廃止には反対意見も多く存在しました。最終的に、1997年にアイヌ文化振興法が制定され、旧土人保護法は廃止されました。これにより、新たな法的枠組みでアイヌ文化の保護と振興が進められることになったのです。

影響と評価

この法律は、アイヌの基本的な権利や文化を犠牲にし、同化政策を推進するための法的基盤ともなりました。アイヌの土地の没収、漁業・狩猟の禁止、日本語の使用義務付けなど、様々な形でその影響が現れました。多くの歴史家や研究者は、この法律をアイヌの文化と権利を抑圧するための手段として批判しており、今後の法整備においても、その影響を忘れないことが重要です。

このように、北海道旧土人保護法はアイヌ民族の歴史的な背景を理解する上で重要な法律であり、過去の政策が現在のアイヌにどのような影響を及ぼしているかを考える契機となります。

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