ジョン・フラナガン (陸上選手)

ジョン・ジーザス・フラナガンは1873年1月9日、アイルランドのリムリックで生を受けた。強靭な肉体と投てき技術を兼ね備え、陸上競技選手として活躍。1896年にアメリカ合衆国へ渡る時点で、すでにハンマー投の世界記録保持者として知られていた。

渡米後、フラナガンはニューヨーク・アスレチッククラブやアイリッシュ・アメリカン・アスレチッククラブといった著名なスポーツクラブに所属した。当時、アメリカには多くのアイルランド系移民アスリートがおり、彼らはその怪力や体格から「アイリッシュ・ホエールズ」と呼ばれ、フラナガンもその一員として名を連ねた。

彼の国際舞台での輝かしいキャリアは、1900年のパリオリンピックで始まった。フラナガンはハンマー投のアメリカ代表として出場。この大会で、彼は他を寄せ付けない圧倒的なパフォーマンスを見せ、銀メダルの選手に4メートル以上の大差をつけて金メダルを獲得した。当時のアメリカ代表チームにおいて、大学生以外でメダルを獲得した唯一の選手であり、銅メダルを獲得したジョサイア・マクラッケンと共に、この種目の表彰台をアメリカ勢が独占する原動力となった。また、この大会ではハンマー投に加え、円盤投にも出場し7位という成績を残している。

1903年からはニューヨーク市警察に勤務を開始したが、この職務は彼の競技生活に理解があり、トレーニングや大会への参加時間を十分に確保できるものだった。この恵まれた環境の下、フラナガンは競技力の維持・向上に励むことができた。

1904年、自国開催となったセントルイスオリンピックにフラナガンは再び登場。ハンマー投では、自身の持つ世界記録を塗り替える51.23メートルの投てきで、危なげなく2大会連続となる金メダルを手にした。さらに、より重い25.4キログラムの重錘投にも出場し、カナダのエティエンヌ・デマルトーに次ぐ銀メダルを獲得するなど、投てき種目における多様な才能を示した。

三度目のオリンピック出場となった1908年のロンドン大会でも、フラナガンの強さは健在だった。ハンマー投で51.93メートルと、再び自身が持つ世界記録を更新する素晴らしい投てきを見せ、見事3大会連続となる金メダルを獲得。同じニューヨーク市警所属のマット・マクグラスらライバルたちを退け、ハンマー投における揺るぎない地位を確立した。また、この大会ではマクグラスらとともに団体競技である綱引きにも出場している。

オリンピック3連覇を達成した後も、フラナガンの競技への情熱は衰えなかった。1909年7月24日には、41歳というベテランの域に達していながら、56.18メートルという驚異的な距離を投げ、自身にとって最後となる世界記録を樹立した。

しかし、1910年にニューヨーク市警の勤務体制に変更があり、競技時間を十分に確保することが困難になったため、フラナガンは市警を辞職。翌1911年にはアメリカを離れることを決断した。その後、1924年に父親が亡くなったことを機に、生まれ故郷であるアイルランドのリムリックへ帰郷。残りの人生を故郷で過ごし、1938年6月3日にこの世を去った。

フラナガンは競技者としてだけでなく、後進の指導者としても影響を与えた。特に、1928年のアムステルダムオリンピックでアイルランドに初めての金メダルをもたらしたハンマー投選手のパット・オキャラハンは、フラナガンから指導を受けた選手であったと言われている。ジョン・フラナガンは、その長きにわたるキャリアと数々の世界記録、そしてオリンピック3連覇という不朽の記録により、ハンマー投の歴史において最も偉大な選手の一人として語り継がれている。

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