ジョン・フレミング

サー・ジョン・アンブローズ・フレミング：真空管発明と多才な人生

サー・ジョン・アンブローズ・フレミング(1849年11月29日-1945年4月18日)は、イギリスを代表する電気技術者、物理学者です。彼の名は、電子工学の歴史に深く刻まれています。フレミングは、1904年に二極真空管（別名:フレミング管、ケノトロン）を発明したことで広く知られています。この発明は、後の電子工学の発展に計り知れない影響を与え、現代社会の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。

早期の人生と教育

フレミングはランカシャー州ランカスターで、会衆派教会の聖職者を父に持ち、生を受けました。幼少期から数学、特に幾何学に秀でた才能を示し、10歳で学校に通い始めます。独学で知識を深め、自ら工房を設け、模型船やカメラを製作するなど、実践的な技術にも長けていました。経済的な事情から働きながら学業を続け、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンを卒業後、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジに進学。1881年に学士号を取得し、1883年にはフェローとなります。

ケンブリッジ大学、ノッティンガム大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで教鞭を執り、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでは、英国で初めて電気工学の教授職に就任。この過程で、著名な数学者や物理学者らに師事し、彼自身の知識・技術を深めていきました。 また、エジソン電灯会社やマルコーニ無線電信会社といった企業のコンサルタントも務めるなど、学術界と産業界の双方で活躍しました。

フレミングの法則と真空管の発明

フレミングは電磁誘導に関する理解を深める過程で、学生が電流と磁場の関係を理解するのに苦労していることに気づき、「フレミングの法則」（左手の法則と右手の法則）を考案しました。これは、電磁誘導の原理を視覚的に理解しやすく表現したもので、現在でも世界中の学校で教育に用いられています。

彼の最も重要な業績は、1904年の二極真空管の発明です。これは、熱電子放出（エジソン効果）の研究に基づいて開発され、整流器として機能する最初の真空管となりました。この発明は、ラジオ受信機やレーダーなどの電子機器の開発に革命をもたらし、後の電子工学の隆盛の礎を築きました。

真空管の発明は、初期の特許紛争に発展します。アメリカ合衆国最高裁判所は、いくつかの理由からフレミングの特許を無効としましたが、それでも彼の発明が電子工学の歴史に与えた影響は揺るぎません。

その他の貢献と晩年

フレミングは真空管以外にも、アンテナの指向性理論、測光、無線電信、電気計測など、多岐にわたる分野で貢献しました。彼は、交流電力システムにおける「力率」という用語を生み出したことでも知られています。

晩年も、アメリカテレビジョン学会の初代会長に就任するなど、積極的に新技術の普及に尽力しました。1929年にはナイトの称号を授与されています。1945年、デヴォン州シドマスの自宅で死去しました。

人物像

フレミングは敬虔なキリスト教徒としても知られており、ロンドンの教会で説教を行うなど、信仰を生活の中心に据えていました。また、写真家としても高い技量を持ち、水彩画やアルプス登山も趣味としていた多趣味な人物でした。写真撮影は生涯にわたる趣味となり、その才能は彼の人物像を豊かに彩っています。

まとめ

サー・ジョン・アンブローズ・フレミングは、真空管の発明のみならず、フレミングの法則、そして交流電力システムに関する貢献など、数々の業績を残しました。さらに、彼の多彩な趣味や信仰心は、彼の複雑で魅力的な人物像を際立たせています。彼の功績は、現代の電子工学、そして広く科学技術の発展に多大なる影響を与え続けています。

もう一度検索