ジョン・ブルック (イギリスの歴史学者)

ジョン・ブルック：18世紀イギリス政治史研究への貢献

ジョン・ブルック(1920-1985)は、20世紀を代表するイギリスの歴史学者の一人です。彼は主に18世紀イギリス政治史を専門とし、その研究は現代イギリス史研究に多大な影響を与えました。本稿では、ブルックの生涯と、彼の業績である数々の歴史書出版について解説します。

困難な生い立ちから歴史学へ

ブルックは貧しい家庭に生まれました。第二次世界大戦を経験した後、彼はマンチェスター大学ヴィクトリア校で歴史学の学位を取得します。在学中から18世紀イギリス政治への強い関心を抱いており、後に彼の研究人生を決定づけることになる出会いが訪れます。

ネイミアとの出会い、そして師弟関係

1947年から1948年にかけて、ブルックはマンチェスター大学でルイス・バーンスタイン・ネイミアによる1760年代イギリス政治に関する講義を受講しました。ネイミアは当時既に第一級の歴史学者として名高く、その講義はブルックに大きな影響を与えます。1951年には、ネイミアが編集していた『英国議会史 1754–1790』の助手としてブルックは迎え入れられました。

ネイミアの下で、ブルックは歴史研究、特にアーカイブ資料の調査・分析に関する高度な知識を習得します。1956年、ネイミアの推薦によりブルックは自身の最初の単著『チャタム伯爵内閣に関する著作（The Chatham Administration 1766–1768）』を出版します。しかし、この著作は、ネイミアの影が濃いと評され、好意的、批判的な両方の評価を受けました。著名な歴史家A・J・P・テイラーからは、ネイミアのスタイルを模倣したものと酷評されました。

『英国議会史』編集への貢献

ブルックにとって最大の仕事は、ネイミアとの共編として知られる『英国議会史 1754–1790』です。ネイミアの死後、ブルックは単独で編集作業の大部分を担い、1964年に全3巻を出版しました。この著作は、ネイミアの歴史学手法の集大成と高く評価され、現代に至るまでイギリス18世紀政治史研究の基礎文献として重要な位置を占めています。

『英国議会史』出版後、ブルックは、後続巻の編集の打診を受けますが、編集長ではないことを理由に辞退しました。その後、彼は王立手稿史料委員会の編集者として活躍することになります。

その他の著作と晩年

王立手稿史料委員会での職務を通して、ブルックは豊富な一次史料にアクセスできるようになりました。彼はこの機会を生かし、1972年にはジョージ3世の伝記を出版し好評を得ます。ウェールズ公チャールズはブルックの研究に感銘を受け、この伝記に序文を寄稿しました。

1985年には、ホレス・ウォルポールの『ジョージ2世回想録』を編集出版し、これは彼の最後の著作となりました。晩年は体調を崩し、1985年に死去しました。

ブルックの業績

ジョン・ブルックは、18世紀イギリス政治史研究に多大な貢献を残しました。ネイミアとの共同作業、そしてそれ以降の単独での研究活動を通して、彼は多くの貴重な史料を後世に残しました。彼の研究は、現代のイギリス史研究においても重要な参照資料として活用され続けています。歴史学者としてだけでなく、優れた編集者、そしてアーカイブ資料の専門家としてのブルックの功績は、高く評価されるべきでしょう。彼の業績は、今後も多くの歴史研究者たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。

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