ジョン・プリングル (初代準男爵)

サー・ジョン・プリングル初代準男爵：18世紀英国医学の巨星

サー・ジョン・プリングル初代準男爵（1707年4月10日-1782年1月18日）は、18世紀の英国で活躍した医師であり、軍事医学、疫学、そして王立協会の会長として名を馳せました。その生涯は、医学研究への情熱と、時代の変革に貢献した輝かしい足跡で彩られています。

若き日の探求と医学への道

スコットランドのロクスバラで生まれたプリングルは、セント・アンドルーズ大学、エディンバラ大学を経て、アムステルダムで商才を磨く予定でした。しかし、ライデン大学でヘルマン・ブールハーフェの医学講義に出会い、医学への強い関心を抱きます。その後、ライデン大学で医学博士号を取得。パリでの研鑽を経て、エディンバラで開業医としてキャリアをスタートさせました。

軍医としての活躍と軍事医学の革新

1742年、オーストリア継承戦争が勃発すると、プリングルはイギリス陸軍に軍医として従軍します。デッティンゲンの戦いでは、敵味方の区別なく負傷兵を治療する野戦病院の設立を提案し実現に導き、その博愛精神と医学的見識を示しました。その後も、カンバーランド公爵率いる軍医総監として、ジャコバイト蜂起鎮圧にも参加。戦場における疫病の予防と治療に尽力し、その経験は後の医学研究に大きく貢献しました。特に、1752年に出版した『兵営と駐屯地の軍隊の疾病に関する考察』は、現代軍事医学の基礎を築いた画期的な著作として高く評価され、クロスインフェクション（院内感染）の予防に関する記述は先駆的なものでした。

王立協会会長と医学研究

プリングルは、1745年に王立協会フェローに選出され、その後、副会長を経て、1772年には王立協会会長に就任します。会長在任中は、コプリ・メダルの授与式での講演などを通して、積極的に学術活動を推進しました。また、『病院と監獄の熱病の性質と原因に関する考察』（1750年）や『腐敗性物質と防腐性物質に関する実験』（1750年）などの論文を発表。これらの業績により、1752年にはコプリ・メダルを受賞しています。さらに、ジェームズ・ウルフ将軍の伝記も著しています。

王室侍医と晩年

プリングルは、カンバーランド公爵、シャーロット王妃、そしてジョージ3世の侍医を務めるなど、王室にも仕え、その高い医学的知識と人柄は広く認められていました。晩年はロンドンとエディンバラを往来しながらも、研究と医療活動に携わりました。1782年にロンドンで死去。生涯を通して、医学の発展に貢献した彼の業績は、現在でも高く評価されています。彼の文書は、長年エディンバラ王立医師会によって秘匿されていましたが、2004年の裁判を経て公開されることとなりました。

人物像と評価

レノルズの肖像画では厳しい表情をしているプリングルですが、書簡からは穏やかで礼儀正しい人柄がうかがえます。音楽愛好家でもあり、ホイッグ党支持者として知られていました。宗教観はユニテリアンから晩年には聖書研究へと変化していきました。1752年に結婚しましたが、子供には恵まれませんでした。

まとめ

サー・ジョン・プリングルは、軍医、疫学者、王立協会会長として、18世紀英国医学に多大な貢献を果たしました。戦場での経験に基づいた軍事医学の確立、王立協会における積極的な活動、そして数々の医学論文の発表など、その功績は歴史に刻まれています。彼の生涯は、医学研究への情熱と、時代の変革への貢献を示す、まさに輝かしいものでした。

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