ジョン・ロス (北極探検家)

サー・ジョン・ロスの伝記

サー・ジョン・ロス（1777年6月24日 - 1856年8月30日）は、スコットランドの海軍少将であり著名な北極探検家です。彼はストランラー近郊のインチに生まれ、父親は地元の牧師アンドリュー・ロスでした。ロスは1786年、9歳という若さでイギリス海軍の実習生としての道を歩み始め、その後18歳まで地中海艦隊での経験を積みました。

1808年にスウェーデン海軍に転籍し、1812年には中佐に昇進しました。彼の名が広く知られることになるのは、1818年の北極探検隊指揮任命です。この探検の目的は、北西航路の発見でした。探検隊はカナダ北部の島々を経由し、北極海へと進入しようとしました。これにより新たなアジア向け航路の開拓を目指していました。

探検は4月にロンドンを出航し、8月にはランカスター海峡に到達しました。ロスは17世紀の探検家ウィリアム・バフィンの記録を参考に、その先に未知の航路があると信じていました。しかし、海峡の奥にそびえていたのは実際には蜃気楼による山脈で、「クロッカー・ヒルズ」と名付けて帰還を決めてしまいます。この決定は部下の支援を受けた者たちから批判を浴び、1年後にはその存在が疑問視されるようになりました。

1829年には、彼の間違いを認め、再度の探検を行うための資金手配を友人のフェリックス・ブースに依頼します。この遠征では、ビクトリー号で出発し、ランカスター海峡を超えて未踏の領域に進入するものの、氷により閉じ込められてしまいました。

4年間にわたる厳しい条件の中で、地元のイヌイットの助けを得てカナダ北部を陸路探検します。この探検では、ブーシア半島で磁北極を発見し、最終的には難破船に到達してから脱出を果たしました。ロスはこの経験で得た成果が彼に名声をもたらしたとされ、金メダルを受賞しました。

また、彼の甥であるジェイムズ・クラーク・ロスが続いて行った探検では、地図に新たな島を加えることに成功しましたが、ロス自身は異なる島々を地図に入れるなど、地図作成でも議論を巻き起こすことになったのです。

ロスはこの冒険を通じて北極探検家としての地位を確立しました。1800年代初頭の科学界でも評価され、イギリスのナイトの称号やバス勲章、さらにはスウェーデンのポールスター爵位を授与されています。1850年には70歳を過ぎたにもかかわらず、北極海域への3度目の探検を試みましたが、1818年の探検で共に行動した部下であるジョン・フランクリンの遠征隊を見つけることはできませんでした。

翌年には将軍に昇進し、その後スコットランドに隠棲しましたが、1856年にロンドンで生涯を終えました。ロスの探検活動は後の世の北極探検に対する理解を深める上で大きな影響を与えました。彼の著作には探検船の航海記録が含まれており、彼の業績を記録する貴重な資料となっています。

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