ジョン・ロールズ

ジョン・ボードリー・ロールズについて

ジョン・ボードリー・ロールズ（1921年 - 2002年）は、アメリカ合衆国の著名な哲学者であり、特に倫理学と政治哲学の領域で重要な貢献をした人物です。彼はリベラリズムや社会契約の再評価に多くの影響を与え、その思想は現代においても強く根付いています。また、彼の著作は国際的に評価されています。

生涯の歩み

ロールズは1921年にメリーランド州ボルチモアで生まれました。彼はボルチモアの学校を卒業後、プレップスクールに転校し、1939年にはプリンストン大学に進学しました。ここで哲学に興味を持ち、1943年に学士号を取得した後、アメリカ陸軍に入隊しました。第二次世界大戦では、ニューギニアやフィリピンでの戦闘を経て、降伏後の日本を訪問し、広島の原爆投下の惨状に直面しました。この経験は彼の倫理観に大きな影響を与え、戦争への嫌悪感を持つようになりました。

1946年に兵役を終えたロールズは、再びプリンストン大学に戻り、1949年に哲学の博士号を取得しました。同年、彼はマーガレット・フォックスと結婚し、共に書籍の索引作成という趣味を持ちました。この時期、彼は後の著作である『正義論』の索引も作成しました。

彼は1952年から1953年にかけてオックスフォード大学に留学し、アイザイア・バーリンの影響を受けました。その後、コーネル大学で助教授職を経て、1962年からハーバード大学で教授として勤務し、1995年以降は名誉教授となるまで多くの功績を残しました。2002年に他界するまで、彼は哲学界で非常に重要な役割を果たしました。

主な著作と思想

『正義論』

ロールズの代表作である『正義論』（1971年）は、現代の倫理学や政治哲学において極めて重要な位置を占めています。この著作は、正義の概念を深く掘り下げ、社会における合理的で公平な原理を探求することに焦点を当てています。彼はこの書の中で、正義を社会制度の中核的価値として位置づけ、その根拠を論じました。

本書は三部構成から成り立っており、第1部では正義を論じる必然性を示し、実行可能な正義の原理を探求します。第2部では、正義論を具体的な社会制度や問題に適用します。最後の第3部では、正義の概念が人間の感情や思考とどのように調和するかを論じ、理論の現実性を強調します。特に彼が提唱した「正義の二原理」は、自己の自由と他者の自由の調和を求めるものであり、現代の政治哲学に大きな影響を与えています。

『政治的リベラリズム』

1993年に発表された『政治的リベラリズム』も重要な著作です。この中で、ロールズは市民間の哲学的、宗教的、道徳的な不合意を受け入れつつ、政治的正統性がどうあるべきかを探ります。彼は、正義がどのように公共的な理由に基づいて形成されるのかを明らかにし、開かれた社会における合意の重要性を強調しました。

原爆投下への視点

ロールズは、原爆投下について独自の見解を示しています。彼は1995年に発表した論文の中で、戦争における法的原則を論じ、原爆投下が不必要であり、道徳的に誤りであると指摘しました。特に、戦争が引き起こす不正義について深く考察し、倫理的観点から戦争の在り方を再検討しました。

結論

ジョン・ボードリー・ロールズは、倫理学および政治哲学の分野において不朽の業績を残した哲学者です。彼の思想は、現代の社会正義についての理解を深化させ、今なお多くの議論を呼び起こしています。彼の著作は、正義と倫理についての深い洞察を提供し、政治哲学の重要な基盤となっています。これにより、彼の名は哲学の歴史に燦然と輝くものとなっています。

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