ジョン・ヴァーリイ (画家)

ジョン・ヴァーリイは、18世紀後半から19世紀半ばにかけて活躍したイギリスの重要な画家です。特に水彩による風景画を得意とし、その卓越した技術と教育者としての手腕で、同時代の美術界に大きな影響を与えました。また、彼は画家一族の出身であり、占星術にも深い関心を寄せて著作を世に出すなど、多方面でその才能を発揮しました。

ヴァーリイは1778年8月17日、ロンドンのハックニーに生を受けました。父も画家でしたが、息子が同じ道を志すことには否定的だったため、ジョンは一時、銀細工師のもとで見習いとして働きました。しかし、父の死去後、母の後押しを得て念願の画家への道を歩み始めます。ヴァーリイ家は芸術家を多く輩出し、彼の弟であるコーネリアスやウィリアム、妹のエリザベスも皆、画家となりました。特に弟コーネリアスとは親交が深く、共に後に王立水彩画協会へと発展する水彩画家の団体の創設に尽力しました。

若き日のヴァーリイは、まず肖像画家の指導を受けますが、16歳の時には建築分野の画家のもとで学び、地域の歴史的な建物をスケッチして写実的な描写力を磨きました。1798年頃には、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの展覧会に古城を描いた作品を発表し、注目を集めます。1804年には水彩画協会に参加し、その後は協会の主要メンバーとして、その展覧会に精力的に作品を出品し続けました。ヴァーリイは自身の創作活動と並行して、後進の指導にも情熱を注ぎました。彼の教えを受けた弟子の中には、ジョン・リネル、ウィリアム・ヘンリー・ハント、ウィリアム・マルレディ、コプリー・フィールディングといった、後に名を成す画家たちが数多く含まれており、その教育者としての功績も特筆されます。

ヴァーリイは実践的な画家であると同時に、理論家、著述家としても知られています。絵画技法に関する多くの教科書や手引書を執筆し、自身の経験と知識を広く共有しました。また、彼は芸術とは一見無関係に思える占星術にも強い関心を持ち、「Visionary Heads」という占星学に関連する著書を出版しています。このユニークな著作には、高名な詩人・画家であるウィリアム・ブレイクが挿絵を提供するという、興味深い協力関係が生まれました。その他の著作としては、「Zodiacal Physiology」（1828年）、「Observations on Color and Sketching from Nature」（1830年）、「A Practical Treatise on Perspective, and Principles of Landscape Design for Young Artists」などがあり、彼の幅広い知識と探究心を示しています。

ジョン・ヴァーリイは、水彩風景画の分野で確固たる地位を築くとともに、教育者、理論家としても後世に影響を残しました。画家一家に生まれ、弟コーネリアスと共に水彩画協会の設立に貢献したことは、イギリスにおける水彩画の発展史において重要な出来事です。彼の多岐にわたる活動は、当時の美術界における水彩画の重要性を高める上で、欠かせない役割を果たしたと言えるでしょう。彼は1842年11月17日に生涯を終えましたが、その作品と教えは今なお、イギリス水彩画の歴史の中で高く評価されています。

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