ジョン・T・トンプソン

ジョン・トリバー・トンプソン：軍人、技術者、そしてトンプソン・サブマシンガンの開発者

ジョン・トリバー・トンプソン（John Taliaferro Thompson, 1860年12月31日 - 1940年6月21日）は、アメリカ合衆国の軍人であり、実業家としても活躍しました。アメリカ陸軍では准将まで昇進し、特にトンプソン・サブマシンガンの開発者としてその名を知られています。彼の生涯は、軍事と技術革新が交錯する時代を象徴しています。

若年期と軍への道

1860年、ケンタッキー州ニューポートで生まれたトンプソンは、父が南北戦争に従軍した砲兵将校であった影響から、幼い頃から軍人の道を志していました。各地の駐屯地で幼少期を過ごし、16歳で軍人になることを決意。インディアナ大学で1年間学んだ後、陸軍士官学校へ進み、1882年に卒業しました。少尉としての最初の任地は、出生地でもあるニューポートの第2砲兵連隊でした。

その後、トンプソンは陸軍の工兵学校と砲兵学校を卒業し、1890年には武器省に配属。この頃には、彼は小火器の専門家としての地位を確立していました。

米西戦争での活躍

米西戦争が勃発すると、トンプソンは中佐に昇進し、キューバ戦線の主任武器省士官として派遣されました。当時、軍需品の物流問題に苦しむ中、トンプソンは卓越した効率性で、タンパに滞留していた18,000トン以上の軍需品を、欠品なく前線へと送り届けました。この功績により、彼は当時最年少の大佐に昇進しました。

また、トンプソンが初めて自動火器を扱ったのもこの時でした。ジョン・H・パーカー中尉の要請を受け、トンプソンはガトリング砲とその弾薬をキューバへ独断で送り、機関銃支隊の活躍を後押ししました。

戦後、トンプソンは武器省小火器部門の責任者に任命され、M1903小銃の開発やM1911拳銃の採用に尽力。M1911拳銃の採用試験では、人間の死体や生きた牛を射撃するという、異例な方法で銃弾の威力を評価しました。

第一次世界大戦とトンプソン・サブマシンガンの誕生

第一次世界大戦が勃発すると、トンプソンは連合国側に共感し、アメリカの参戦前から欧州での小火器の需要を認識していました。1914年に陸軍を退役し、レミントン・アームズ社の主任技師に就任。その後、彼は「塹壕箒」と仮称する、塹壕戦で敵を駆逐するための自動小火器の開発に着手しました。

ジョン・ブリッシュ少佐の遅延ブローバック構造に感銘を受けたトンプソンは、彼と協力してオート・オードナンス社を設立。トンプソン・サブマシンガンとして知られることになる自動小火器の開発を進めました。1917年、アメリカが参戦すると、トンプソンは准将として陸軍に復帰し、工廠長として全陸軍部隊の小火器生産を監督。この功績により、防衛殊勲章を受章しました。

戦後、トンプソンは再び自動火器の開発に戻りました。当初はブリッシュ式の遅延ブローバックを利用した自動小銃を開発していましたが、当時の小銃弾では機構が動作しないことが判明し、最終的には.45ACP弾を使用するサブマシンガンとして完成させました。1920年に特許を取得しましたが、第一次世界大戦終結後の市場では需要が低迷し、軍との契約も難航しました。その後、法執行機関への販売に切り替え、一定の成功を収めました。

しかし、1928年になると売り上げが落ち込み、会社の経営状況が悪化したため、トンプソンはオート・オードナンス社の経営者を辞任しました。

その後と遺産

1940年、トンプソンは79歳で亡くなり、ニューヨーク州ウェストポイントの陸軍士官学校に埋葬されました。彼の死後まもなく、アメリカは第二次世界大戦に参戦。陸軍は大量のトンプソン・サブマシンガンを購入し、海軍と海兵隊もこれに続きました。トンプソン・サブマシンガンは、アメリカを代表する火器として、第二次世界大戦中から戦後にかけて広く使用され、その名を歴史に刻みました。

ジョン・トリバー・トンプソンは、軍人としての卓越したキャリアと、技術者としての革新的なアイデアによって、アメリカの軍事史と銃器開発史において重要な人物として記憶されています。

もう一度検索