ジョヴァンニ・ディ・パオロ

ジョヴァンニ・ディ・パオロ・ディ・グラツィア（Giovanni di Paolo di Grazia, 1399年または1403年 - 1482年）は、イタリアのシエナ派を代表する画家です。初期の記録によると、タッデーオ・ディ・バルトーロの工房で修業を積んだとされています。その後、彼は絵画制作だけでなく、ダンテの『神曲』を含む写本の挿絵制作にも才能を発揮しました。

生涯と作風

ジョヴァンニ・ディ・パオロは、15世紀のシエナ派の中でも特に重要な画家の一人として知られています。彼の初期作品には、初期シエナ派の画家たちの影響が色濃く見られますが、次第に独自のスタイルを確立していきます。それは、冷たく、鮮やかで、時に強烈な色彩と、縦に引き伸ばされたような人物表現を特徴とするもので、国際ゴシック様式の画家であるジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの影響も見て取れます。

彼の作品には、しばしば風変わりな夢のような雰囲気が漂います。例えば、1455年頃に描かれた『トレンティーノの聖ニコラス』は、シュールレアリスティックな要素が強く、彼の独特な世界観をよく表しています。また、晩年の作品である『最後の審判、天国と地獄』（1465年頃）や『聖母被昇天』（1475年）では、伝統的な宗教的テーマを扱いながらも、グロテスクで異様な表現が用いられています。これらの作品は、彼の芸術的才能と、常識にとらわれない斬新な発想を示しています。

ジョヴァンニ・ディ・パオロの作品は、彼の死後しばらくの間は評価が低迷しましたが、20世紀に入り、その芸術性が再評価されるようになりました。彼の作品は、現在では多くの美術館に所蔵されており、世界中の美術愛好家を魅了しています。

代表作

1426年: 『天使と聖母子』
1427年: 『玉座の聖母とキリスト』（セルビア国立美術館、ベオグラード）
1435年: 『謙遜の聖母』（シエナ絵画館）
1440年代: 『洗礼をする聖アンサヌス』（キリスト教博物館、エステルゴム）
1440年: 『大天使聖ミカエル』（バチカン美術館バチカン絵画館）
1445年: 『天地創造と楽園追放』（メトロポリタン美術館、ニューヨーク）
1445年: 『楽園』（メトロポリタン美術館、ニューヨーク）
1445年: 『ハンガリーの聖クレアとエリザベス』（私蔵）
1445年: 『聖母子と聖人たち』（ウフィツィ美術館、フィレンツェ）
1450年: 『雌に育てられた聖ステパノ』（サント・ステーファノ・アッラ・リッツァ教会、シエナ）
1454年: 『荒野に赴く洗礼者聖ヨハネ』（ナショナル・ギャラリー、ロンドン）
1455年: 『船を救うトレンティーノの聖ニコラス』（フィラデルフィア美術館）
1455年: 『聖母の戴冠』（メトロポリタン美術館、ニューヨーク）
1460年代: 『キリスト降誕』（キリスト教博物館、エステルゴム）
1460年: 『アヴィニョンで教皇を前にした聖カタリーナ』（ティッセン・ボルネミッサ美術館、マドリッド）
1462年: 『東方三博士の礼拝』（メトロポリタン美術館、ニューヨーク）
1465年: 『最後の審判、天国と地獄』（シエナ絵画館）
1475年: 『キリストと魂を取り交わすシエナの聖カタリーナ』（私蔵）
* 1475年: 『聖母被昇天』（シエナ絵画館）

これらの作品は、彼の作風の変遷と、宗教的テーマに対する独特な解釈を物語っています。

ジョヴァンニ・ディ・パオロは、その独創的な芸術性によって、後世の芸術家たちに大きな影響を与えました。彼の作品は、今日でも多くの人々に愛され、鑑賞され続けています。

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