ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニ

ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニ（Giovanni Battista Belzoni、1778年 11月15日生まれ、1823年 12月3日没）は、19世紀初頭に活躍したイタリア出身の探検家であり、エジプト考古学の黎明期に重要な足跡を残した人物です。しかし、彼のキャリアは探検家として始まったわけではなく、極めてユニークな経歴を持っています。

驚くべきことに、彼は探検家となる以前、類稀な怪力を誇る大道芸人として、またサーカスのパフォーマーとして生計を立てていました。身長が2メートルを超すというその巨躯を生かし、「人間ピラミッド」のような力技の芸で観客を魅了していたのです。さらに、彼は単なる力自慢の芸人ではなく、機械工学に関する専門的な知識も持ち合わせていました。こうした異分野での経験が、後に彼が古代遺跡の発掘や遺物の運搬といった困難な作業に挑む上で、独自の強みとなったのかもしれません。

ベルツォーニの探検活動は、主にアフリカ大陸、特にエジプトに焦点を当てて行われました。当時のエジプトは、ナポレオンのエジプト遠征以降、ヨーロッパ列強による古代文明への関心が高まり、多くの探検家や研究者が貴重な遺産を求めて活動していました。ベルツォーニもまた、この潮流の中でその才能を発揮することになります。

彼の最もよく知られた業績の一つは、1817年にアブ・シンベル神殿の出入り口を発掘したことです。長年にわたり砂に埋もれ、その存在すら忘れられかけていたラムセス2世の大神殿を再び日の光の下に晒したこの発見は、エジプト考古学における画期的な出来事でした。また、彼はギザにあるカフラー王のピラミッド内部への侵入と調査にも成功しました。さらに、古代エジプト新王国時代のファラオ、セティ1世の壮麗な墓を王家の谷で発見し、その内部を詳細に記録しました。これらの発掘や調査は、当時の技術や環境を考えると極めて困難な undertaking であり、彼の体力、技術、そして不屈の精神があってこそ成し遂げられたと言えるでしょう。

彼の発見の中には、現在ロンドンの大英博物館で展示され、多くの人々を魅了している巨大な彫像も含まれています。テーベ（古代エジプトの首都）のラメセウム神殿から発見されたラムセス2世の坐像の一部、通称「ヤンガー・メムノン」は、その巨大さと精巧さで知られていますが、これもまたベルツォーニがイギリスへ運搬した功績です。

私生活では、アイルランド出身のサラという女性を妻としていました。彼女もまた、夫の探検活動に同行するなど、その生涯を共に歩んだと伝えられています。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルツォーニの生涯は、元大道芸人から著名な探検家へと転身を遂げた波乱に満ちたものでした。その巨大な身体と多才さ、そして偉大な発見の数々は、後世の人々にも大きな影響を与えました。冒険活劇の主人公として世界的に有名な「インディアナ・ジョーンズ」のキャラクターは、彼の異色の経歴やエジプトでの活動からインスピレーションを得て創造されたという説もあり、彼の生涯がいかにドラマチックで魅力的であったかを物語っています。

ベルツォーニは、探検家としての活動中にアフリカでその生涯を終えましたが、彼がエジプトで発見し、世に知らしめた古代の遺産は、今日でも世界中の人々によって研究され、称賛されています。彼の名は、エジプト考古学の初期のパイオニアとして、そして不可能を可能にした規格外の探検家として、歴史に刻まれています。

もう一度検索