ジョヴァンニ・ヴィスコンティ (ミラノ大司教)

ジョヴァンニ・ヴィスコンティ（1290年 - 1354年10月5日）は、中世イタリアにおいて重要な役割を果たした人物です。カトリック教会の高位聖職者であり、ミラノ大司教（在位：1342年 - 1354年）を務めました。また、政治家、軍事司令官としての側面も持ち合わせており、ミラノおよび周辺都市の支配者として権勢を誇りました。

生涯

ジョヴァンニは、マッテーオ1世・ヴィスコンティとボーナコーサ・ボッリの間に生まれました。1317年、ミラノの教会会議で大司教に選出されましたが、教皇ヨハネス22世はこれを認めず、アイカルド・ダ・カモデイアを大司教に任命しました。この決定に反発したジョヴァンニは、1323年に破門され、ヴィスコンティ家は対立教皇ニコラウス5世と同盟を結びました。ニコラウス5世はジョヴァンニを枢機卿に任命し、教皇庁との対立は深刻化しました。

1331年、ジョヴァンニはノヴァーラ司教および領主となります。1339年にアイカルドが死去すると、ジョヴァンニは満を持してミラノに入りました。しかし、教皇クレメンス6世がジョヴァンニをミラノ大司教として正式に認めたのは、1342年の教皇勅書によってでした。これにより、ジョヴァンニは1342年から1354年まで、正式にミラノ大司教の地位を保持することになります。

兄ルキーノとともに、ジョヴァンニはミラノの共同統治者の地位を教皇から購入しました。ルキーノの死後、ジョヴァンニは兄ステーファノの子マッテーオ2世、ガレアッツォ2世、ベルナボを共同統治者に指名し、ヴィスコンティ家の勢力を盤石なものとしました。

1349年にルキーノが亡くなると、ジョヴァンニはミラノの全支配権を掌握し、ロンバルディア地方において権力を強化していきました。1350年にはボローニャを支配下に置き、翌1351年には甥のベルナボにその統治を委ねました。しかし、ジョヴァンニの勢力拡大は、フィレンツェなどの周辺都市を警戒させました。

1350年、フィレンツェはジョヴァンニの勢力拡大を恐れ、アレッツォで教皇特使や他の都市の代表者と会談し、対ミラノ同盟を結ぼうとしました。ジョヴァンニはこれらの動きを察知し、トスカーナやロマーニャの皇帝派（ギベリン）と同盟を結びました。また、対立していたヴェローナ領主マスティーノ2世・デッラ・スカラの死後、その息子カングランデ2世・デッラ・スカラと友好関係を築きました。

1351年、ジョヴァンニはイーモラを包囲するためにミラノ、ボローニャ、そして同盟関係にあったファエンツァやフォルリから軍勢を派遣し、ベルナボが指揮を執りました。ロマーニャ地方で戦いが激化する中、ジョヴァンニはフィレンツェの人々に「自分には何の意図もない」と信じ込ませることに成功しました。しかしその後、多くの有力なボローニャ市民を捕らえ、拷問し、フィレンツェとの陰謀を自白させ、これをフィレンツェおよびトスカーナの教皇派（ゲルフ）との戦いを正当化する口実としました。

ジョヴァンニは、ヴィスコンティ家の一員であるジョヴァンニ・ダ・オレッジョを司令官に任命し、彼にボローニャから軍を集めてトスカーナへ侵攻させ、多くの町や城を占領させました。一方、トスカーナの皇帝派同盟者たちは、各地で混乱を引き起こしました。

1352年、ジョヴァンニはジェノヴァの領主となり、翌年にはノヴァーラも手に入れました。彼の勢力は拡大を続け、1353年には文人のペトラルカが客としてジョヴァンニの元を訪れています。

ジョヴァンニ・ヴィスコンティは1354年10月5日にその生涯を閉じました。彼の死後も、ヴィスコンティ家によるミラノの支配は続きました。ジョヴァンニの生涯は、中世イタリアにおける複雑な政治と権力闘争の縮図と言えるでしょう。

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