ジョージ・カレブ・ビンガム

ジョージ・カレブ・ビンガム（George Caleb Bingham、1811年3月20日 - 1879年7月7日）は、19世紀のアメリカを代表する画家の一人です。彼は、その卓越した描写力と、アメリカのフロンティアの生活を捉えた作品で知られています。また、政治家としても活動し、ミズーリ州の州議会議員や財務長官を務めました。

生い立ちと初期のキャリア

ビンガムは、バージニア州オーガスタ郡の農家に生まれました。幼少期に家族とともにミズーリ州に移住し、そこで絵画の才能を開花させました。彼は独学で絵を学び、9歳の時にミズーリを訪れた肖像画家チェスター・ハーディングに才能を見出されました。父親の死後、母親の経営する女子学校を手伝ったり、家具職人の見習いをしたりしましたが、19歳頃には肖像画家として活動を始め、収入を得るようになりました。

1838年頃からセントルイスで肖像画家として成功を収め、有力者との交流を深めました。より本格的な美術教育を求めて、数ヶ月間フィラデルフィアやニューヨークのナショナル・アカデミー・オブ・デザインで学びました。

政治活動とヨーロッパでの研鑽

1848年、ビンガムは民主党員としてミズーリ州の州議会議員に当選し、政治家としても活動を始めます。彼は、政治活動をテーマにした作品も制作しました。1856年からはヨーロッパに渡り、パリに数ヶ月滞在してルーブル美術館で巨匠たちの作品を研究しました。その後ドイツに滞在し、デュッセルドルフ美術アカデミーで1859年まで学びました。同時期にアメリカの歴史画家であるエマヌエル・ロイツェもデュッセルドルフで活動しており、二人は親交を深めました。

アメリカ帰国後と晩年

アメリカに帰国後、ビンガムは再び肖像画家として活動しました。南北戦争中はミズーリ州の財務長官を務めるなど、公職にも携わりました。また、ミズーリ大学コロンビア校で美術を教え、後進の育成にも尽力しました。

再評価とルミニズム

ビンガムは没後、一時的に画家としての名声が薄れていましたが、1930年代になって、19世紀後半のアメリカ美術における「ルミニズム」の画家の一人として再評価されました。「ルミニズム」とは、光の描写に焦点を当てた絵画スタイルで、ビンガムの作品もこの特徴をよく表しています。

彼の代表作として、「ミズーリ河を下る毛皮商人」（1845年）が挙げられます。この作品は、ミズーリ川を下る毛皮商人の姿を、緻密な描写と独特の光の表現で描いており、アメリカのフロンティアの雰囲気を伝えています。

ビンガムの作品は、アメリカの歴史や文化を理解する上で重要な資料となっています。彼の作品は、単なる風景画や肖像画にとどまらず、当時のアメリカ社会や人々の生活を描き出したものであり、その芸術的価値は今日でも高く評価されています。

主な作品

ミズーリ河を下る毛皮商人(1845)
ダニエル・ブーンの故郷への護送(1851-52)
郡の選挙 (1852)
カンザスシティの町の眺め(1854)
ジョリー・フラットボートマン (1846)
釣り人 (1851)
* 政治演説 (1854)

もう一度検索