ジョージ・ニコポウラス

ジョージ・コンスタンティン・ニコポウラス（通称「ドクター・ニック」）は、ギリシャ系アメリカ人の医師で、特にエルビス・プレスリーの主治医であったことで広く知られています。しかし、彼の医師としてのキャリアは、プレスリーを含む患者への過剰な処方薬問題で大きな論争を呼びました。

法廷闘争と医師免許剥奪

1980年、ニコポウラスは、エルビス・プレスリーやジェリー・リー・ルイスなど、14名の患者に対して過剰な薬を処方したとして、14件の罪で起訴されました。地方検事は殺人罪での立件を見送りましたが、これはプレスリーの死因に関する医師たちの意見が分かれていたためです。記録によると、1977年だけでニコポウラスは、プレスリーにアンフェタミン、バルビツール酸系薬、麻薬、精神安定剤、睡眠薬、下剤、ホルモン剤など、1万包以上の薬を処方していました。ニコポウラスは、プレスリーの薬物依存を抑えようと努力し、偽薬も調合しましたが、効果はなかったと主張しました。最終的に、陪審員はニコポウラスが患者のために行動したと判断し、全ての罪状で無罪となりました。

しかし、1980年にテネシー州医療委員会は、ニコポウラスの過剰な処方を非倫理的行為ではないとしながらも有罪と認定しました。その結果、3ヶ月の資格停止処分と3年の執行猶予が科されました。さらに、1995年には、ニコポウラスが長年にわたり多くの患者に過剰な処方を続けていたことが判明し、テネシー州医療委員会は彼の医師免許を永久に剥奪しました。この出来事は、「ドクター・フィールグッド」という報道がなされ、大きな波紋を呼びました。ニコポウラスは、これらの処方が、他の治療法がない慢性的な痛みを抱える患者に対して行われたものだと弁明しましたが、彼の主張は受け入れられませんでした。彼は後に、過剰な処方を行ったことを認め、「ケアをし過ぎた」と述べています。

裁判中には、多くの友人たちがニコポウラスを支援し、法廷闘争に必要な資金を集めました。この事件は、医師の倫理と責任について社会に深く考えさせる契機となりました。

エルビス・プレスリーとの関係

ニコポウラスは、エルビス・プレスリーの主治医として、その晩年を支えました。彼は、プレスリーの薬物依存を抑えようと尽力したと述べていますが、処方薬の過剰投与がプレスリーの死に繋がったという見方も根強く残っています。ニコポウラス自身は、その責任を否定していますが、彼の医療行為は常に議論の的となってきました。

2010年、ニコポウラスはプレスリーとの関係について綴った著書『The King and Dr. Nick: What Really Happened to Elvis and Me』を出版しました。この書籍では、プレスリーの知られざる一面や、彼との日々のやり取りが描かれており、その内容も賛否両論を呼びました。

ニコポウラスの生涯は、医療倫理と責任、そして過剰な薬物処方の危険性を示す事例として、今後も語り継がれるでしょう。彼の行為は、医療従事者としての倫理観や患者への適切なケアについて、私たちに多くの教訓を与えてくれます。

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