ジョージ・ワシントン就任式の聖書

ジョージ・ワシントン就任式の聖書

ジョージ・ワシントン就任式の聖書は、アメリカ合衆国初代大統領の就任式において象徴的な役割を果たした重要な遺物です。この聖書は1789年にニューヨーク市で行われたワシントン氏の就任式で使用され、以来、多くの歴史的な式典でも活用されてきました。

聖書の概要

この聖書は1767年に刊行された欽定訳であり、外典を含むことが特徴です。また、当時の歴史や天文学、法律に関する詳細なデータも付録として添付されています。現在、セント・ジョンズ第1ロッジにて「ジョージ・ワシントン就任記念聖書」として保管されています。

ワシントンの就任式の状況

ワシントン氏の就任式は、フェデラル・ホールというウォール街のバルコニーで行われ、多くの人々が見守る中で進行しました。副大統領に選ばれたジョン・アダムスや、ニューヨーク州知事のジョージ・クリントンなど、名だたる来賓が出席していたのです。式典中、聖書が用意されていないことに気づいたグランドマスターのジェイコブ・モートンが自身のロッジから聖書を持参し、セント・ジョンズ・ロッジに保管されていた聖書が、上院書記のサミュエル・アリン・オーティスによって深紅のベルベットのクッションに置かれました。この聖書は、宣誓の際に手を置かれる重要なアイテムとして使用されたのです。

式の際、聖書はランダムに開かれた創世記第49章が開かれており、宣誓に際してワシントン氏は聖書に手を当てた後、祈りの言葉『So help me God』を付け加えたと言われています。しかし、この言葉については当時の信頼できる証言が乏しく、議論の余地があります。ワシントン氏による声明を報告したフランスのムスティエ侯爵の記録にも、この表現の明記はされていません。

聖書のその後

この聖書は、1921年のウォレン・G・ハーディングや1953年のドワイト・D・アイゼンハワー、1977年のジミー・カーター、1989年のジョージ・H・W・ブッシュの大統領就任式でも使用され、特にブッシュ氏の式はワシントン氏の就任から200周年に当たります。さらに、2001年のジョージ・W・ブッシュ大統領の就任式でも使用予定でしたが、悪天候により実現しませんでした。傷みが進んでいるこの聖書は、セント・ジョンズ・ロッジでの会議でも開かれることはなくなりました。

加えて、この聖書はワシントン氏やリンカーン大統領の葬儀にも使用され、さまざまな歴史的なイベントで重要視されています。たとえば、合衆国議会での礎石敷設式やワシントン記念塔の敷設式、さらには自由の女神の礎石打設100周年など、様々な国民的行事においてもその存在が確認されています。

近年では、フェデラル・ホールで展示されることが増えており、また、2009年に設立されたセント・ジョンズ第1ロッジ財団が、この聖書の保存や修復に取り組んでいます。

この聖書は、ただの文献ではなく、アメリカ合衆国の歴史や政治の重要な瞬間を記録するものであり、その象徴的な存在も、多くの人々に感銘を与え続けています。

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