ジョーン・オブ・イングランド (シチリア王妃)

ジョーン・オブ・イングランドの生涯

ジョーン・オブ・イングランド（1165年10月 - 1199年9月4日）は、イングランド王ヘンリー2世とアリエノール・ダキテーヌの間に生まれた三女です。彼女は、その生涯においてシチリア王妃、そしてトゥールーズ伯妃という二つの重要な立場を経験しました。イタリアではジョヴァンナ・ディンギルテッラ、フランスではジャンヌ・ダングルテールと呼ばれていました。

生い立ちと結婚

ジョーンはアンジューで生まれ、母の宮廷があるウィンチェスターやポワチエで育ちました。1176年、シチリア王グリエルモ2世が結婚を申し込むと、翌年には盛大な結婚式と戴冠式がパレルモ大聖堂で執り行われました。しかし、二人の間に生まれた息子ボエモンドは夭折し、その後子供は恵まれませんでした。

十字軍と波乱

1189年にグリエルモ2世が亡くなると、ジョーンは新王タンクレーディに捕らえられます。その後、兄リチャード1世が第3回十字軍に参加するためイタリアに上陸した際、妹の監禁を知り、武力を行使して彼女を解放させました。さらに、リチャード1世の婚約者ベレンガリアと共に聖地へ向かう途中、嵐で船が難破し、キプロスで捕らえられてしまいます。最終的にリチャード1世によって救出され、アッコンへ到着しました。

サラディンとの縁談と再婚

ジョーンはリチャード1世のお気に入りの妹であり、彼はムスリムのサラディンの弟との結婚を計画しましたが、ジョーン自身がイスラム教徒との結婚を拒否したため実現しませんでした。その後、フランス王フィリップ2世から求婚されるも、これも実現しませんでした。1196年、兄の政策の一環として、ジョーンはトゥールーズ伯レーモン6世と結婚し、クエルシーとアジュネを持参金としました。この結婚によって、彼女は後にトゥールーズ伯レーモン7世となる息子を出産します。

最期

レーモン6世との結婚生活は必ずしも幸せとは言えませんでした。1199年、ジョーンは夫の不在時に領主の反乱に直面し、生命の危機を感じて兄の保護を求めましたが、その兄リチャード1世はすでに亡くなっていました。ジョーンは疲労困憊のまま母アリエノールと再会し、フォントヴロー修道院へ運ばれましたが、そこで出産後に息を引き取りました。彼女は死の床で修道女として出家し、生まれた息子リチャードもまた短い生を終えました。ジョーンはフォントヴロー修道院に埋葬され、その50年後には息子レーモン7世もその隣に埋葬されました。

子女

最初の夫グリエルモ2世との間に1男。
ボエモンド（1181年）

2度目の夫レーモン6世との間に2男。
レーモン7世（1197年 - 1249年）
* リシャール（リチャード、1199年）

ジョーン・オブ・イングランドは、その波乱に満ちた人生の中で、様々な試練に直面しながらも、自身の意志を貫き通した女性でした。彼女の生涯は、中世ヨーロッパの複雑な政治情勢と、王族女性の役割を映し出す鏡となっています。

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