ジル・ジョーンズ

ジル・ジョーンズ（Jill Jones）は、1962年 7月11日にアメリカ合衆国で生まれた歌手であり、ソングライターです。特に1980年代には、著名なアーティストであるティーナ・マリーやプリンスのバックコーラスとして活躍しました。

経歴

ジョーンズはオハイオ州で生を受けました。母親はアフリカ系アメリカ人とインディアンの血を引くファッションモデル、父親はイタリア系のジャズ・ドラマーでした。幼少期は主に祖父母のもとで育ちましたが、母親の再婚を機にロサンゼルスへ移住しました。15歳の頃から、従姉であり、母親がマネージャーを務めていたティーナ・マリーのバックコーラスとして歌の世界に足を踏み入れました。

近年、ジョーンズはリベラルな社会的主張を積極的に支持する姿勢を示しています。また、ファンとの交流の場としてMyspaceやFacebookなどのSNSを活用しています。

彼女の初期のキャリアを語る上で欠かせないのが、1980年代から1990年代にかけてのプリンスとの密接な協業です。これには、彼女がソロアーティストとしてデビューした作品での共同作業も含まれています。その後も、ジョーンズは2001年以降、アコースティックなサウンドからダンスミュージックまで、幅広いジャンルのアルバムを発表しています。

初期から中期にかけての音楽活動

ジョーンズとプリンスの出会いは、18歳の時、プリンスの「ダーティ・マインド」ツアーにティーナ・マリーが前座として出演した際に遡ります。プリンスは彼女の歌声に感銘を受け、活動を続けるよう励まし、その後も連絡を取り続けました。1982年には、プリンスに招かれてサンセット・サウンド・レコーディングスタジオでアルバム『1999』の制作に参加し、複数の楽曲でバックボーカルを務めました。この際のクレジットでは「J.J.」というイニシャルが使用されています。また、「1999」や「Little Red Corvette」といったヒット曲のミュージックビデオにも出演し、未発表となった「Automatic」のビデオにも姿を見せています。プリンスの「1999」ツアーには、彼がプロデュースしていたヴァニティ6と共にバックコーラスとして参加しました。このツアー後、ジョーンズはミネアポリスに拠点を移し、プリンスとの関係を深めました。女優としても、映画『プリンス/パープル・レイン』（1984年）にウェイトレス役でカメオ出演し、続く『グラフィティ・ブリッジ』ではより重要な役柄を演じ、プリンスとの印象的なシーンもありました。

1987年、ジョーンズはセルフタイトルとなるソロデビューアルバム『ジル・ジョーンズ』を、プリンスが主宰するペイズリー・パーク・レコードからリリースしました。このアルバムではプリンスがジョーンズとの共作としてクレジットされていますが、実質的には彼が全楽曲を手がけたと言われています。リリース当時は批評家からの評価は高かったものの、商業的な成功には至りませんでした。このアルバムは、2007年頃には既に廃盤となっていました。

ソロ第二作に向けて、ペイズリー・パークでは数曲のデモが制作され、「Boom Boom」という楽曲のためにビデオ撮影も行われましたが、結局このアルバムは完成しませんでした。しかし、1993年にはフライング・レコードよりダンスシングル「Bald」を発表しています。

プリンス関連以外でも、ジョーンズは精力的に活動しました。アポロニア6のバックコーラスを務めたり、プリンスが書いたシングル「G-Spot」のレコーディングに参加したりしました。また、日本の音楽家である坂本龍一のアルバム『ビューティ』からのシングル「ユー・ドゥ・ミー」ではリードボーカルを担当しています。さらに、ジョルジオ・モロダーへのトリビュートアルバムにブロンディのカバー「Call Me」を提供しました。ソングライターとしても、リサ・リサの楽曲「The Great Pretender」の作詞と共同プロデュースを手がけています。1995年にはロンドン・レコードでBaby Motherというバンドのリードボーカルとしてアルバムをレコーディングしましたが、この作品は残念ながら未発表となりました。1996年には、ナイル・ロジャースやバーナード・エドワーズを含むシックのツアーにリードボーカルの一人として参加しましたが、日本武道館での公演直後にエドワーズが急逝するという悲劇に見舞われました。この最後のライブの模様を収めたアルバム『ライヴ・イン・ジャパン - トリビュート・トゥ・バーナード・エドワーズ』（1999年）で、彼女の歌声を聞くことができます。

プリンスのシングル「Raspberry Beret」（1985年）のB面に収録された「She's Always In My Hair」は、ジル・ジョーンズについて書かれた曲として知られています。

彼女のデビューアルバムはプリンスのサポートを受けていましたが、その後の作品ではプリンスから独立し、よりポップ・ロック寄りのサウンドを展開しました。2001年以降は、エッジの効いたモダンなダンスナンバーから、アコースティックなロックテイストの楽曲まで、その多様な表現力を見せています。過去には、お蔵入りとなったヴァニティ6の未発表曲「Vibrator」に声の出演（スキット部分）をしたこともあります。

ソロキャリアの展開

ペイズリー・パークの元写真家であり親友であるデヴィッド・ホンルの支援のもと、ジョーンズは2001年にクリス・ブルースとの共作となるアルバム『Two』をリリースしました。2004年には、The Grand Royals feat. Jill Jones名義でアルバム『Wasted』を発表し、リードボーカルを務めています。

2008年にはニューヨークで行われたジェレミー・グロフのパフォーマンスに飛び入り参加し、彼がカバーしていた自身の楽曲「So Much in Love」を共に歌いました。2009年 4月28日には、Peace Bisquitレーベルからシングル「Living for the Weekend」をリリースしています。アルバム『Wasted』と『Two』は現在廃盤となっていますが、『Living for the Weekend』と共にiTunes Storeなどのデジタル配信で購入可能です。

ディスコグラフィ

アルバム

『ジル・ジョーンズ』 - Jill Jones (1987年、Paisley Park)
Two (2001年、Dav Music) ※with クリス・ブルース
Wasted (2004年、Peace Bisquit) ※The Grand Royals Ft. Jill Jones名義
Living for the Weekend (2009年、Peace Bisquit)
I Am (2016年、Peace Bisquit)

シングル

"Mia Bocca" b/w "77 Bleeker St." (1987年、Paisley Park)
"G-Spot" b/w "Baby Cries (Ay Yah)" (1987年、 Paisley Park)
"For Love" (1987年、Paisley Park)
"Bald" (1993年、Flying Records)
"Station" (2001年、Dav)
* "Someone To Jump Up" (2008年)

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