ジ・オーケストラ

ジ・オーケストラ (The Orckestra)

ジ・オーケストラは、1977年3月に結成されたイギリスのアヴァンギャルド・ジャズとアヴァン・ロックのアンサンブルです。ヘンリー・カウ、マイク・ウェストブルック・ブラスバンド、フォーク歌手のフランキー・アームストロングという、異なるバックグラウンドを持つ3つのグループが合流し、12人編成という大所帯となりました。

略歴

ヘンリー・カウとマイク・ウェストブルック・ブラスバンドは、ジ・オーケストラ結成以前から交流がありました。1973年には、ウェストブルックがヘンリー・カウのコンサートにゲスト出演し、1975年には、シグマ・フェスティバルで共演しています。そして1977年3月、3グループは「ムーヴィング・レフト・レビュー」で再び同じ舞台に立ち、合同でパフォーマンスを行うことを決定しました。音楽誌『メロディ・メイカー』は、この合併を「最もエキサイティングなもの」と評価しました。

同年6月には、リージェンツ・パークの野外劇場で演奏を行い、その音楽性の幅広さで観客を魅了しました。その後、ヨーロッパツアーを2度実施し、イタリア、フランス、スウェーデンなどで公演を行いました。

しかし、異なる音楽性を持つグループの融合には、困難も伴いました。ヘンリー・カウの複雑なリズムをブラスバンドが理解するのに苦労したり、リハーサル時間の不足から、ヘンリー・カウの楽曲を十分に演奏できなかったりといった問題が生じました。そのため、コンサートはブラスバンドの楽曲が中心となる傾向がありました。

ジ・オーケストラは、1978年5月24日にフランスのボルドーで最後のコンサートを行い、その後解散しました。しかし、ヘンリー・カウのメンバーであったジョージー・ボーンとリンジー・クーパーは、その後も数年間ウェストブルックとの協力を続けました。

音楽

ジ・オーケストラは、既存の楽曲を演奏することが多く、マイク・ウェストブルック・ブラスバンド、ヘンリー・カウ、フランキー・アームストロングが個別に演奏していた作品を合同で演奏しました。ヘンリー・カウは、ブラスバンドの楽曲を自分たちのセットに取り入れることもありました。

レコーディング

ジ・オーケストラの活動期間中に公式なレコーディングはリリースされませんでしたが、1977年のパリ公演を収録したライブ・アルバムが計画されました。しかし、録音状態が良くなかったため、リリースは見送られました。2003年には海賊版音源がリリースされましたが、音質は良くありません。

2006年には、『Henry Cow Box』の購入者特典として、1978年のライブ・パフォーマンスを収録した3インチCDシングル「Unreleased Orckestra Extract」が初めて公式にリリースされました。

メンバー

ヘンリー・カウ

フレッド・フリス (Fred Frith) - ギター
ティム・ホジキンソン (Tim Hodgkinson) - オルガン、アルトサックス、クラリネット
クリス・カトラー (Chris Cutler) - ドラム
リンジー・クーパー (Lindsay Cooper) - バスーン、フルート、オーボエ
ダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) - ボーカル
ジョージー・ボーン (Georgie Born) - ベース、チェロ

マイク・ウェストブルック・ブラスバンド

マイク・ウェストブルック (Mike Westbrook) - ピアノ、ユーフォニアム
ケイト・ウェストブルック (Kate Westbrook) - ピッコロ、テナーホルン（アルトホルン）
デイヴ・チェンバース (Dave Chambers) - ソプラノ&テナーサックス
ポール・ラザフォード (Paul Rutherford) - トロンボーン、ユーフォニアム
フィル・ミントン (Phil Minton) - ボーカル、トランペット

その他

フランキー・アームストロング (Frankie Armstrong) - ボーカル

ディスコグラフィ

シングル

"Unreleased Orckestra Extract" (2006年、Recommended) ※3インチCDシングル。『Henry Cow Box』 (2006年)のボーナス・ディスク

ブートレグ

Live in Paris, November 20, 1977 (2003年、Hickory) ※日本製、2枚組

ジ・オーケストラは、短期間の活動でしたが、アヴァンギャルド音楽シーンに大きな足跡を残しました。異なる音楽性を持つグループが融合することで生まれた、その実験的なサウンドは、今もなお多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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