ティム・ホジキンソン

ティム・ホジキンソン：実験音楽の探求者

ティム・ホジキンソン（Tim Hodgkinson）は、1949年5月1日、イングランドのウィルトシャー州ソールズベリーで生まれました。彼は、リード楽器、ラップ・スティール・ギター、キーボードを主に演奏する、イギリスの作曲家であり演奏家です。特に、1968年にフレッド・フリスと共に結成した前衛的なグループ、ヘンリー・カウの創設メンバーとしてその名を知られています。ヘンリー・カウ解散後は、数多くのバンドやプロジェクトに参加し、現代音楽の作曲や即興演奏に力を注いでいます。

ヘンリー・カウ時代

ケンブリッジ大学在学中に、ホジキンソンはフレッド・フリスと出会い、1968年にヘンリー・カウを結成しました。1978年の解散まで、彼はバンドの中核メンバーとして多くの楽曲を作曲し、その音楽性を牽引しました。代表的な楽曲には、アルバム『傾向賛美』に収録された「Living in the Heart of the Beast」や、ライブ演奏のみが残る「Erk Gah」などがあります。ヘンリー・カウでの活動は、ホジキンソンにとって音楽的な基盤となり、他のミュージシャンとの協働を通じて新たな音楽の可能性を探求する貴重な経験となりました。また、バンド解散後には、クリス・カトラーと共にバンドに関する書籍『The Henry Cow Book』を編集し、その活動を記録しました。

その後の活動

ヘンリー・カウ解散後、ホジキンソンは様々なプロジェクトに取り組みました。1980年には、ポストパンクバンド、ザ・ワークを結成し、ヨーロッパ各地でツアーを行いました。また、ギタリストのビル・ジローニスと共にレコードレーベル、ウーフ・レコードを設立し、自身の作品や他のアーティストの作品をリリースしました。1990年代には、スコットランドのパーカッショニスト、ケン・ハイダーとのデュオでソビエト連邦をツアーし、シベリアのシャーマニズム音楽との出会いをきっかけに、K-Spaceというバンドを結成しました。K-Spaceでは、シャーマニズム音楽とジャズの要素を融合させた独自の音楽性を追求し、アジアやヨーロッパでツアーを行いました。

Konk Packと即興演奏

ホジキンソンは、即興演奏家としても精力的に活動しています。Konk Packは、彼が参加するフリー・インプロヴィゼーション・バンドの一つで、サイケデリア、フリージャズ、ライブエレクトロニクスを融合させた即興演奏を行っています。また、ロル・コックスヒル、フレッド・フリス、クリス・カトラーなど、多くのミュージシャンと共演し、多様な音楽的交流を深めています。2006年には、ヘンリー・カウ解散以来初めて、カトラー、フリスとのトリオでコンサートを行い、往年のファンを沸かせました。

作曲家としての活動

1990年代初頭からは、現代音楽の作曲にも注力しています。初期にはヘンリー・カウ時代のアプローチを回帰しつつ、ルーマニアのスペクトル楽派との出会いを経て、音の動きや不安定な音響システムから音楽構造を構築する新しい方法を模索しました。その成果は、アルバム『Pragma』や『Sang』などの作品に結実しています。また、ハイペリオン・アンサンブルやNe(x)tworksなどの現代音楽アンサンブルとのコラボレーションを通じて、自身の作品を発表し続けています。彼の楽曲「Fragor」は、映画『シャッター・アイランド』で使用されました。

音楽性

ティム・ホジキンソンの音楽性は、ヘンリー・カウの複雑な音楽構造から、ザ・ワークの激しいギターサウンド、Konk Packの自由な即興演奏、そして現代音楽まで、多岐にわたっています。彼は、クラリネット、バスクラリネット、アルトサックスなどのリード楽器を中心に演奏しますが、ヘンリー・カウ時代にはキーボード、ザ・ワークやK-Spaceではラップ・スティール・ギターも演奏しました。また、ザ・ワークではヴォーカルも担当しました。ソロ作品では、ヴィオラ、パーカッション、サンプリング、シーケンス、MIDIなども使用し、多彩な音響世界を構築しています。彼は独学で音楽を学び、幼少期にピアノとクラリネットのレッスンを受けたものの、すぐに自己流の音楽探求へと進みました。楽譜の初見歌唱を学ぶことで、作曲の幅を広げました。

ティム・ホジキンソンは、実験精神と多様な音楽的バックグラウンドを融合させ、常に新たな音楽の可能性を追求し続ける、現代音楽シーンの重要な存在です。

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