ジーキル博士の彷魔が刻

ジーキル博士の彷魔が刻：善と悪のはざまで揺れる運命

1988年、東宝より発売されたファミリーコンピュータ用ゲーム『ジーキル博士の彷魔が刻』。このゲームは、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説『ジーキル博士とハイド氏』を大胆にアレンジした、横スクロールアクションゲームです。海外版タイトルは『Dr. Jekyll and Mr. Hyde』とシンプルに名付けられています。

ゲームの舞台は19世紀のロンドン。プレイヤーは、医学博士ヘンリー・ジキルとなり、婚約者ミリセントの待つセント・レーマン教会を目指します。しかし、ジキル博士の行く手には、様々な障害が待ち受けています。

二重人格と逆スクロール：独特のゲーム性

本作最大の特徴は、ジキル博士とハイド氏、二つの異なる人格を操作することです。ジキル博士は穏やかで知的な人格ですが、ダメージを受けると残虐なハイド氏へと変身します。そして、この変身がゲームシステムに大きな影響を与えます。

ジキル博士モードでは、右方向へのスクロールで、爆弾魔やパニックに陥った市民といった障害物を避けながら進んでいきます。攻撃手段はステッキのみですが、敵を攻撃するとストレス値が増加します。一方、ハイド氏モードでは、スクロール方向が左へと逆転。街並みは魔界と化し、様々な魔物が襲いかかってきます。ハイド氏はパンチやサイコウェーブで攻撃し、敵を倒すことでストレス値を軽減します。

このリバーススクロールシステムは、ファミコンゲームとしては非常に斬新な試みでした。左右反転したマップをそれぞれのモードで攻略していくことで、プレイヤーは独特の緊張感と戦略性を楽しむことができます。しかし、ハイド氏モードでジキル博士モードよりも先に進んでしまうと、天罰として落雷が降り注ぎ、ゲームオーバーとなってしまいます。ただし、最終ステージは例外で、独自のマップが用意されています。

ストレスとライフ：繊細なバランス

ゲームには、ライフゲージとストレスゲージという二つの重要なパラメーターが存在します。ライフゲージは、文字通りジキル博士とハイド氏の体力を示すもので、0になるとゲームオーバーです。ストレスゲージは、ダメージを受けることで増加し、満タンになると人格が変化します。

ジキル博士モードでは、ミセス・レイチェルという未亡人に会うことでライフとストレスの回復、そしてコインの獲得が可能です。しかし、ランダムでストレスが増加し、コインが減少することもあります。ハイド氏モードでは、敵を倒すことでストレスを軽減し、ライフを回復します。このライフとストレスのバランスが、ゲームクリアへの鍵となります。

コインの役割とエンディング

ゲーム内ではコインも重要なアイテムです。ミセス・レイチェルから入手できる他、ハイド氏モードで敵を倒すことでも獲得できます。このコインは、特定の敵の攻撃を無効化するために使用します。

また、本作はマルチエンディングを採用しています。単純にジキル博士が教会にたどり着いても、婚約者の姿はなくバッドエンディングとなります。真のエンディングを見るためには、最終ステージで「魔界王レテュール」というボスをハイド氏モードで倒す必要があります。ボスを倒すとジキル博士に戻り、以降は平和的に教会にたどり着き、真のエンディングを迎えることができます。

難易度と評価：賛否両論の嵐

『ジーキル博士の彷魔が刻』は、その高い難易度でも知られています。ゲーム誌『ファミコン通信』でのクロスレビューは19点と低評価で、「新しい試みだが問題あり」との意見も散見されました。一方で、『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票では15.10点と、やや高めの評価を得ています。

その後も、様々なゲームレビューでその難易度や独特のゲーム性が取り上げられ、賛否両論を巻き起こしました。しかし、そのユニークなシステムとストーリーは、多くのゲーマーの記憶に刻み込まれています。 ゲームの難しさゆえに、今ではカルト的な人気を誇る作品となっています。

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