ジードルーナス・イルガウスカス

ジードルーナス・イルガウスカス：リトアニアが生んだ技巧派センター

ジードルーナス・イルガウスカス（Žydrūnas Ilgauskas）は、1975年6月5日、リトアニアのカウナスで生まれました。221cmの長身と、インサイドプレイヤーとしては珍しいほどの多彩な技術を持ち合わせた彼は、NBAのクリーブランド・キャバリアーズを中心に活躍し、多くのファンを魅了しました。背番号「11」は、同郷の偉大な先輩、アルヴィーダス・サボニスへの憧憬の表れでした。

リトアニア時代

17歳でŽalgiris-2でデビュー後、カウナスのクラブチーム、アトレタスで中心選手として活躍しました。1996年まで在籍し、その才能を開花させました。

NBAでの挑戦

1996年、NBAドラフトでクリーブランド・キャバリアーズから1巡目20位指名を受け、念願のNBA入りを果たします。しかし、デビューとなるはずだった1996-97シーズンは右足の骨折で全休。翌1997-98シーズンに満を持してデビューし、全82試合に出場。81試合で先発出場を果たすなど、即戦力として、ブレビン・ナイト、デレック・アンダーソン、セドリック・ヘンダーソンらと共にプレイオフ進出に貢献しました。ルーキーイヤーの1998年2月には、ルーキーオールスターゲームに出場し、MVPを獲得する活躍を見せました。

しかし、順風満帆に見えたNBAキャリアは、度重なる怪我に悩まされることになります。1998-99シーズンは左足の骨折でほぼ全休。続く1999-2000シーズンは右足の骨折で再び全休。2000-2001シーズンも足の骨折により24試合の出場に終わりました。この頃から、彼は「ガラスの足」と揶揄されるようになり、怪我の多い選手というイメージが定着してしまいます。

2001-02シーズンからは、出場時間を制限することで徐々に復調。以降6シーズンは大きな怪我なくプレイを続け、安定した成績を残しました。レブロン・ジェームズの加入後、チームは躍進を遂げますが、自身の出場時間は減少。しかし、ベテランとしての経験を生かし、チームに貢献し続けました。2005-06シーズンには、ルーキーイヤー以来となるプレイオフ出場を果たし、2006-07シーズンには自身初のNBAファイナルに進出しました。

2010年2月、トレードでワシントン・ウィザーズへ移籍しますが、すぐにバイアウトが成立。クリーブランド・キャバリアーズに復帰しました。同年7月には、レブロン・ジェームズを追うようにマイアミ・ヒートへ移籍。2010-11シーズン終了後、現役引退を発表しました。

プレイスタイル

221cmの長身を生かした、多彩なテクニックが彼の持ち味でした。リバウンドやブロックを得意とし、ゴール下では圧倒的な存在感を放ちました。フックシュート、ダンクシュート、ティップイン、ジャンプシュート、ミドルシュートなど、豊富なシュートバリエーションを持ち、「技のデパート」と称されました。フリースローも得意とし、2005-06シーズンには約83%の成功率を記録しています。運動能力やフィジカルコンタクトに強いタイプではありませんでしたが、その上手さで勝負する「柔」のセンターでした。

トリビア

ニックネームは「Z」（名前の頭文字）と「The Wall」（ゴールを死守する壁のような存在という意味）。
社会活動にも熱心で、クリーブランド・クリニックを訪れ、病気の子供たちを励ます活動を積極的に行っていました。
* 子供の頃に憧れていた選手は、同じリトアニア出身のアルヴィーダス・サボニスでした。

ジードルーナス・イルガウスカスは、怪我に苦しみながらも、その才能と努力でNBAという厳しい世界で生き抜いた、記憶に残る名センターでした。

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