ジープ・パトリオット

ジープ・パトリオット：本格派SUVとしての魅力と販売終了の経緯

ジープ・パトリオットは、クライスラーがジープブランドから販売していたスポーツ・ユーティリティ・ビークル（SUV）です。北米では「ペイトリオット」と発音されます。2006年4月、ニューヨーク国際オートショーで初公開され、翌2007年より販売が開始されました。

ジープ・リバティを下回るクラスに位置づけられながらも、本格的なオフロード走行にも対応できる高い走破性能が特徴でした。デザイン面では、同クラスに位置するジープ・コンパスと共通点が見られますが、その走破性においては明確な違いが存在しました。

パトリオットは、ダッジ・キャリバーやジープ・コンパスと同じクライスラーMKプラットフォームを採用していました。しかし、コンパスとは異なり、悪路走破性を重視した設計が施されています。この設計思想の違いが、両車のキャラクターを明確に区別する要因となっています。

搭載エンジンは、GEMA設計の2.4Lと2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジンが用意されました。輸出市場、特に豪州や欧州向けには、フォルクスワーゲン製の2.0L直列4気筒ディーゼルエンジンも選択可能でした。多様なニーズに対応できるエンジンバリエーションも、パトリオットの魅力の一つでした。

駆動方式は、前輪駆動に加え、「フリーダム・ドライブI」と「フリーダム・ドライブII」の2種類の4WDシステムが用意されていました。これにより、ユーザーは走行環境や好みに合わせて最適な駆動方式を選択することができました。4WDシステムは、悪路での走破性を高める上で重要な役割を果たしていました。

生産は、ジープ・コンパスと共にイリノイ州ベルビデーレ工場で行われていました。この工場は、クライスラーにとって重要な生産拠点の一つであり、多くのモデルがここで製造されていました。

興味深いことに、ロシア市場では、UAZというロシアの自動車メーカーが「UAZ・パトリオット」という同名のSUVを販売していました。ジープ・パトリオットと名称が同じであるにも関わらず、全く別の車両です。なお、ジープ・パトリオットの名称は、日本市場で販売されていたジープ・チェロキー(KJ、KK)の北米名と同じです。

2010年には、米国車として初めて日本のエコカー補助金対象車となり、環境性能の高さを示しました。しかし、2013年、日本市場では販売が終了しました。その理由は、フロント部分が当時の日本の歩行者頭部保護法の基準を満たしていなかったためです。この販売終了後、日本の市場ではコンパスへの統合が進められました。一方、アメリカ合衆国では2017年まで販売が続けられました。

ジープ・パトリオットは、悪路走破性を重視した本格派SUVとして、一定の支持を集めました。しかし、法規制や市場環境の変化により、日本市場から姿を消すことになりました。その歴史は、自動車産業における技術革新や法規制の厳格化といった様々な要素が複雑に絡み合った結果として理解できます。

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