ジーン・タニー

ジーン・タニー（本名ジェームズ・ジョセフ・タニー）は、1897年5月25日にニューヨークで生まれ、1978年11月7日に81歳で亡くなったアメリカのプロボクサーです。1926年から1928年にかけて世界ヘビー級王座を保持し、その知的な戦い方と華麗なディフェンス技術でボクシング史に名を刻みました。

生い立ちと軍隊経験

タニーは、ボクシング好きの父の影響で幼少期からボクシングに親しみました。15歳で船会社に勤務した後、19歳で海兵隊に志願。軍内部のボクシング大会でその才能を開花させ、第一次世界大戦下のフランスではアメリカ師団のライトヘビー級王者となり、「戦う海兵」（The Fighting Marine）として知られるようになりました。1915年にはプロに転向し、そのキャリアをスタートさせました。

プロボクサーとしてのキャリア

タニーは、優れたディフェンス技術を持つ技巧派ボクサーでした。プロキャリアでの唯一の敗北は、後にミドル級世界王者となるハリー・グレブとのライトヘビー級タイトルマッチでした。グレブのダーティーな戦法に苦戦したタニーでしたが、その後はグレブの戦いを徹底的に研究し、3度にわたる再戦で全て勝利を収め、その実力を証明しました。

1926年9月23日、タニーはフィラデルフィアで当時の世界ヘビー級王者ジャック・デンプシーに挑戦。フットワークと正確なストレートでデンプシーの強打を封じ、判定勝利を収めて世界ヘビー級王者に輝きました。1927年9月22日には、シカゴでのデンプシーとの再戦で、7回にダウンを喫するピンチに見舞われましたが、レフェリーの機転により8カウントで立ち直り、その後は逆にデンプシーをダウンさせ、判定勝ちで初防衛に成功しました。この試合は「ロング・カウント・ファイト」としてボクシング史に残る名勝負となりました。

1928年7月26日、ヤンキー・スタジアムでトム・ヒーニーを破り2度目の防衛を果たした後、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの遺産相続人であるポーリー・ロウダーとの婚約と同時にボクシングからの引退を表明しました。

引退後の活動

引退後、タニーは実業家として14もの事業に関わり成功を収めました。現役時代からシェイクスピアや哲学書を愛読し、劇作家ジョージ・バーナード・ショーとも親交があったほどのインテリでもあり、後年イェール大学で講師としてシェイクスピアを講義しました。また、短期間ではありますが俳優としても活動し、1926年には「The Fighting Marine」などに出演しました。

1928年にはリングマガジン ファイター・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、1980年には世界ボクシング殿堂、1990年には国際ボクシング名誉の殿堂博物館に迎えられました。

戦績とスタイル

タニーの通算戦績は83戦77勝（45KO）1敗3引分。試合をチェスのように捉えて戦略を練るタイプで、7年計画を立ててデンプシー打倒を目標としていたと言われています。脆かった拳を鍛え、フットワークを強化するなど、周到な準備が彼の強さの要因でした。ジェームス・J・コーベットやベニー・レナードの影響を受け、俊敏なフットワークと正確なジャブ、ストレートを駆使し、カウンターを狙う戦法で多くの強敵を打ち破りました。

家族と晩年

息子のジョン・タニーは、カリフォルニア州選出のアメリカ合衆国上院議員やアメリカ合衆国下院議員を務めました。ジーン・タニーは1978年に81歳で亡くなり、コネチカット州スタンフォードのロングリッジ・ユニオン墓地に埋葬されました。

主な勝利

ジャック・デンプシー（2回）
トム・ヒーニー
トミー・ローラン
トミー・ギボンズ
ジョルジュ・カルパンティエ

参考文献

『凄くて愉快な拳豪たち』（梶間正夫著、ベースボール・マガジン社刊）
* 『ボクシング珍談奇談』（ジョー小泉著、リング・ジャパン社刊）

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