スイス航空316便着陸失敗事故

スイス航空316便着陸失敗事故の概要

1979年10月7日、スイス航空316便は、ジュネーブから北京へ向かう途中、経由地であるギリシャのアテネ、エリニコン国際空港への着陸時に事故を起こしました。この事故で、乗員乗客154名のうち14名が命を落とすという痛ましい結果となりました。

316便はダグラス DC-8-62型機で、当初は滑走路33RへのILS進入を予定していましたが、パイロットが空港を目視で確認できたため、滑走路15への着陸に変更しました。しかし、この判断が後に事故を招くことになります。

事故発生時の状況

316便は、滑走路15Lに146ノット（約270km/h）という速度で着陸しました。着陸地点は滑走路端から740m地点と、通常よりも奥でした。滑走路の残りは2,240mでしたが、機体は十分に減速することができず、滑走路をオーバーランして道路上で停止しました。衝撃で左翼と尾部が分離し、機体から火災が発生しました。

犠牲者は全員21列目から26列目に着席しており、火災による煙または炎によって死亡しました。犠牲者にはイギリス人、ドイツ人、フランス人が含まれていました。また、乗客の中には中国の医学会に参加するために搭乗した医師が100人以上も含まれていました。一方で、シカゴ大学の名誉教授であるハンス・モーゲンソウなど、奇跡的に生き残った人もいました。

事故原因の究明

事故調査の結果、事故原因はパイロットの過失であることが判明しました。パイロットは通常よりも速い速度で着陸しており、着陸地点も通常より奥でした。さらに、着陸後のブレーキ操作や逆噴射装置の使用が不適切だったため、機体は滑走路内で停止することができませんでした。これらの要因が複合的に重なり、滑走路オーバーランという最悪の結果を招いたと考えられます。

事故後の影響

事故後、316便には450kg以上の放射性同位体と少量のプルトニウムが積載されていたことが明らかになりました。プルトニウムは医師の荷物の中にあり、事故現場から発見されました。そのため、消防隊や救急隊の被曝検査が行われました。

さらに、316便には200万ドル以上の工業用ダイヤモンドも積載されていました。これらのダイヤモンドはボンベイへ輸送される予定でしたが、事故による火災でほとんどが破壊されてしまいました。

事故から2日後、ギリシャ当局は機長を業務上過失致死で送検しました。1983年に行われた裁判では、機長と副操縦士は有罪判決を受け、それぞれ5年と2年半の懲役刑となりました。しかし、最終的に2人は保釈されています。また、機長と副操縦士はスイス航空を解雇されることはありませんでした。

関連事項

* アエロメヒコ航空230便着陸失敗事故

この事故は、航空機の安全運行におけるパイロットの責任の重要性を改めて認識させるものでした。また、事故後の対応や責任追及のあり方についても、多くの議論を呼ぶこととなりました。

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