スイゼンジナ

スイゼンジナ（水前寺菜）

スイゼンジナ（学名：Gynura bicolor）は、東南アジアを原産とするキク科の多年草です。別名キンジソウ（金時草）とも呼ばれ、加賀野菜としても知られています。地域によって様々な呼び名があり、古くから親しまれてきた野菜です。

名称の由来と多様な呼び名

スイゼンジナは、地域によって異なる名前で呼ばれています。熊本県周辺では「スイゼンジナ」、石川県では「キンジソウ」、愛知県では「シキブソウ」、沖縄県や鹿児島県では「ハンダマ」として知られています。江戸時代に熊本から金沢へ伝わり、加賀野菜の金時草として広まりました。

学名 Gynura bicolor のうち、属名の Gynura は「メスのしっぽ」を意味し、特徴的な柱頭の形状に由来します。種小名の bicolor は「二色の」という意味で、葉の表裏で色が異なることにちなんでいます。中国では「紅鳳菜」と呼ばれています。

分布と形態

スイゼンジナは東南アジアが原産で、タイ北部や中国南部が原産地と考えられています。草丈は40 - 60 cm ほどに成長し、茎と葉は多肉質です。葉は互生し、長さは10 cm 程度で長楕円形をしており、切れ込みがあります。葉の表面は深緑色で鈍い光沢があり、裏面は鮮やかな赤紫色またはブロンズ色をしています。葉をつぶすと赤い汁が出ます。夏には黄色またはオレンジ色の小さな花を咲かせますが、種子はできません。そのため、繁殖は主に挿し芽によって行われます。

栽培方法

スイゼンジナは、春に苗を植え付けて夏から秋にかけて収穫します。種子が採れないため、越冬させた親株から芽先を採取して苗とするか、市販の野菜から挿し芽で苗を作ります。生育適温は20 - 25度で、高温に強く真夏の暑さにも耐えますが、低温には弱く5度以下になると生育が停止し、地上部が枯死します。挿し芽は暖かくなってから行いましょう。地下部は乾燥に弱いため、やや湿り気のある土壌が適しています。連作障害を防ぐため、輪作年限は1 - 2年とされています。

植え付けの2週間前までに元肥を施し、幅90 cm、高さ20 cm 程度の畝を作ります。株元に敷き藁をするなどして土壌の乾燥を防ぎ、適宜灌水を行います。草丈が30 - 40 cm 程度になったら、葉の色を見ながら月に1回程度追肥を行います。肥料が不足すると葉の色が悪くなります。

草丈が30 cm 程度に成長したら収穫が可能で、株元に近い葉を5 - 6枚残して芽先を摘み取ります。その後は、立ち上がってくる柔らかい芽先を15 - 20 cm の長さに切り取って収穫します。初夏から秋にかけて、2週間に1度くらいのペースで収穫できます。冬には地上部が枯れますが、春になると再び若葉が出てきます。

利用法

スイゼンジナは緑黄色野菜として分類され、葉と柔らかい茎の先端を食用にします。旬は6 - 11月で、葉の色が濃くハリのあるものが良品とされます。石川県、熊本県、沖縄県などで親しまれており、軽く茹でてポン酢をかけたり、おひたし、汁の実、天ぷら、酢の物などにして食べられています。茹でると煮汁が紫色になり、ぬめりとほのかな苦味があります。すまし汁にすると菊に似た風味が楽しめます。紫色の色素は抗酸化作用のあるアントシアニンで、カロテン、ビタミンC、カルシウム、カリウム、鉄分などの栄養素も豊富です。

保存する際は、乾燥を防ぐために湿らせたキッチンペーパーなどで包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存すると良いでしょう。

スイゼンジナは、食卓に彩りと栄養を添える、魅力的な野菜です。

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