スウィングファイア (ミサイル)

スウィングファイア

概要

スウィングファイアは、イギリスで1960年代に開発された初期の有線誘導式対戦車ミサイルです。第一世代の対戦車ミサイルに分類され、1966年から配備が始まり、1993年まで運用されました（イギリス陸軍では2005年頃に退役）。開発はフェアリー・アビエーション社とブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション（BAC）が共同で行い、その前身として開発が進められていた「オレンジウィリアム」対戦車ミサイルの成果が活かされています。

ユニークな特徴

このミサイルの最も特筆すべき点は、その名称の由来ともなった独特な能力です。スウィングファイアは、発射後にロケットモーターの推力偏向制御（TVC）を用いて、照準器が指示する方向へ最大90度まで機体の進行方向を変えることができます。この機能により、ミサイルを発射した操作員は、発射機が置かれた場所から離れて、より遮蔽されたり高所に位置するなど、生存性の高い有利な場所からミサイルを誘導することが可能となりました。従来の対戦車ミサイルでは、射手が発射機と同じ場所に留まる必要があり、敵からの反撃に対して脆弱でしたが、スウィングファイアはこの問題を軽減することに成功しました。

運用プラットフォームとバリエーション

スウィングファイアは様々な車両やヘリコプターに搭載されて運用されました。特に、イギリス陸軍のFV438 スウィングファイアやFV102 ストライカーといった装甲車に搭載され、機甲部隊の対戦車能力を強化しました。搭載するプラットフォームによって、ミサイルシステム全体が異なる名称で呼ばれることもありました。

ビースウィング (Beeswing): ランドローバーなどの軽車両に搭載されたシステム。
ホークスウィング (Hawkswing): リンクス汎用ヘリコプターに搭載されたシステム。
ゴルフスウィング (Golfswing): 小型装甲車への搭載を想定したシステム。

誘導方式の進化

スウィングファイアの初期型は、MCLOS（Manual Command to Line Of Sight、手動指令照準線一致誘導方式）と呼ばれる誘導方式を採用していました。これは、射手が目視でミサイルと目標を捉え、ジョイスティック操作などでミサイルの軌道を直接修正して目標に命中させる方式です。後に、より誘導が容易で命中精度の高いSACLOS（Semi-Automatic Command to Line Of Sight、半自動指令照準線一致誘導方式）へと改良されました。SACLOS方式では、射手は目標に照準を合わせ続けるだけで、システムが自動的にミサイルを照準線上に誘導します。このSACLOS改良型は特にSWIG（Swingfire With Improved Guidance）とも称されました。

実戦経験と退役

本ミサイルは、湾岸戦争やイラク戦争といった実際の前線においても使用され、対戦車戦闘に従事しました。しかし、技術の進化に伴い、より高性能な新型ミサイルが登場したため、多くの国で退役が進みました。イギリス陸軍においては、後継としてアメリカ製のFGM-148 ジャベリン対戦車ミサイルが選定され、長い検討期間を経て2005年半ばにスウィングファイアの運用が終了しました。

主要諸元

直径: 170mm
翼長: 0.39m
全長: 1.07m
重量: 27kg
弾頭: 7kg HEAT（成形炸薬弾）
射程: 150 - 4,000m
速度: 185m/s
誘導方式: 有線誘導（初期型：MCLOS、後期型：SACLOS/SWIG）
飛翔制御: 推力偏向制御（TVC）
貫徹能力: 800mm RHA（均質圧延装甲）
単価: 7,500 ポンド（当時の価格）

運用国

現在

エジプト（エジプト陸軍）
スーダン（スーダン陸軍）
ナイジェリア（ナイジェリア陸軍）

過去

イギリス（イギリス陸軍）
イラン（イラン陸軍）
ポルトガル（ポルトガル陸軍）

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