FGM-148 ジャベリン

FGM-148 ジャベリン：多目的歩兵携行ミサイルの詳細解説

FGM-148 ジャベリンは、アメリカ合衆国で開発された歩兵携行式の多目的ミサイルシステムです。M47 ドラゴンの後継として開発され、戦車などの装甲戦闘車両を主な目標としますが、建築物、野戦築城、さらには低空を飛行するヘリコプターへの攻撃能力も有しています。

特徴

ジャベリンの最大の特徴は、その高度な機能と運用性です。

ファイア・アンド・フォーゲット（撃ちっ放し）機能: 発射前に目標をロックオンすると、ミサイルは自律的に目標を追尾します。射手は発射後すぐに退避できるため、安全性が大幅に向上します。
トップアタックモード: 装甲車両に対しては、装甲の薄い上部を狙うトップアタックモードが選択可能です。これにより、高い撃破能力を発揮します。
ダイレクトアタックモード: 建築物などに対しては、直接攻撃を行うダイレクトアタックモードを選択できます。
バックブラスト抑制: 発射時のバックブラストを抑制する設計により、室内など閉鎖空間からの発射も可能です。
高い命中率: メーカー発表によれば、講習直後のオペレーターでも94%の命中率を誇ります。

構造と機能

ジャベリンは、以下の要素で構成されています。

CLU（Command Launch Unit）： 発射指揮装置。目標の捕捉、照準、発射制御を行います。熱源暗視装置を内蔵しており、昼夜を問わず運用可能です。
LTA（Launch Tube Assembly）： 発射筒体。ミサイル本体を保護し、発射時にミサイルを射出します。
ミサイル本体: タンデム成形炸薬弾頭を搭載。サブ弾頭で反応装甲を無効化し、メイン弾頭で主装甲を貫通します。

ミサイルは射出用ロケットモーターで発射筒から押し出され、数メートル飛翔後に安定翼が開き、飛行用ロケットモーターが点火します。これにより、バックブラストを最小限に抑え、安全に運用できます。

運用

ジャベリンは、通常、射手と弾薬手の2名で運用されます。射手はミサイルの発射を担当し、弾薬手は周囲の警戒を行います。しかし、単独での運用も可能です。

開発と配備

ジャベリンの開発は1983年に開始され、1996年にアメリカ軍への配備が始まりました。開発・製造は、レイセオン社とロッキード・マーティン社の合弁企業であるJAVELIN社によって行われています。

これまでに、20,000基以上のミサイル本体と、3,000基以上のCLUが納入されています。2002年には、台湾に360基のミサイルと40基の発射機等が提供されました。また、2003年にはイギリス軍が採用を決定し、旧式のミランからの転換が進められました。

実戦での活躍

ジャベリンは、2003年のイラク戦争で初めて実戦使用されました。また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナ軍によって多数使用され、ロシア軍の戦車や装甲車に大きな損害を与えました。この活躍から、ウクライナでは「聖ジャベリン」として、抵抗の象徴となっています。

性能

装甲貫徹力: RHA換算600mm以上
発射準備時間: 30秒以下
再装填時間: 20秒以下
射程: 初期バージョン 2,000m、最新バージョン 2,500m
最高飛翔高度: トップアタックモード 150m、ダイレクトアタックモード 50m

採用国

アメリカ合衆国
イギリス
アラブ首長国連邦

類似システム

スパイク LR/MR
01式軽対戦車誘導弾
* HJ-12

エピソード

2022年のウクライナ侵攻において、ジャベリンはロシア軍の戦車に対する高い効果を発揮しました。これにより、ウクライナではジャベリンが抵抗の象徴となり、「聖ジャベリン」という愛称で呼ばれるようになりました。

ジャベリンは、その高い性能と信頼性から、世界中の軍隊で採用されている対戦車ミサイルシステムです。実戦での活躍が証明されており、現代戦における重要な兵器の一つと言えるでしょう。

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