スウェーデンの映画

スウェーデン映画史：巨匠から現代の才能まで

スウェーデン映画は、世界的に高く評価される映画産業として、20世紀を通じて数々の才能豊かな監督を輩出しました。イングマール・ベルイマン、ヴィクトル・シェーストレムといった巨匠から、現代の若手監督まで、スウェーデンの映画界は常に革新と芸術性を追求し、国際的な舞台で輝きを放ち続けてきました。本稿では、初期の黎明期から現代までのスウェーデン映画の歴史を、重要な人物や作品を交えながら詳細に解説します。

初期：国際的な注目を集める

スウェーデン映画の隆盛は、1912年、Svenska Biografteaternの設立に端を発します。ヴィクトル・シェーストレムとマウリッツ・スティッレルという、後のハリウッドでも活躍する2人の巨匠の登場によって、スウェーデン映画は国際的な注目を集めるようになりました。スティッレルは、後のハリウッドスターとなるグレタ・ガルボの初期作品を監督したことで知られています。第一次世界大戦下では、中立国であったスウェーデン映画は、アメリカ、フランス、イギリスといった国々から孤立していたドイツ映画界に大きな影響を与えました。

1920年代半ばには、シェーストレムとスティッレル、そしてガルボはハリウッドへ渡り、MGMで活躍。スウェーデン映画の技術やスタイルはハリウッドに大きな影響を与えました。しかし、彼らのハリウッド移籍はスウェーデンの映画界に大きな打撃を与え、一時的な低迷を招きました。それでもシェーストレムは1928年にスウェーデンへ戻り、監督業を続けました。

1930年代以降：芸術性と商業性の狭間

トーキーの発明（1930年）以降、スウェーデン映画界は、芸術性のみならず商業的な成功も求められるようになりました。第二次世界大戦中は、アルフ・シェーベルイやグスタフ・モランデルといった監督たちが、厳しい状況下でも芸術性の高い作品を制作し続けました。

戦後：ベルイマンの時代

スウェーデン映画史において最も重要な人物と言えるのが、イングマール・ベルイマンです。1950年代から頭角を現した彼は、1955年の『夏の夜は三たび微笑む』で国際的な評価を獲得しました。続く『第七の封印』（1957年）は、彼の代表作として広く知られています。『処女の泉』（1960年）、『鏡の中にある如く』（1961年）、『ファニーとアレクサンデル』（1983年）といった作品で、ベルイマンは3度アカデミー外国語映画賞を受賞。また、『叫びとささやき』（1972年）は作品賞にノミネートされるなど、数々の賞に輝きました。ベルイマン作品で知られる撮影監督スヴェン・ニクヴィストも、スウェーデン映画に大きな貢献をしました。彼は『ファニーとアレクサンデル』と『叫びとささやき』でアカデミー撮影賞を受賞しています。

ベルイマン作品に参加した監督、ヴィルゴット・シェーマンも重要な人物です。彼の作品『私は好奇心の強い女』（1967年）は、性描写を巡り大きな議論を巻き起こし、スウェーデン映画界に衝撃を与えました。

ボー・ヴィーデルベリも、スウェーデンを代表する監督の一人です。『Raven's End』、『The Man on the Roof』などの作品で高く評価され、3度アカデミー外国語映画賞にノミネートされました。ヤン・トロエルは、ヴィーデルベリの作品で撮影監督を務めた後、監督としてデビュー。彼の作品『移民者たち』（1971年）は、アカデミー賞に複数ノミネートされました。

近年：新たな才能の台頭

ロイ・アンダーソンは、1996年の復帰作『散歩する惑星』で、高い評価を得ました。ラッセ・ハルストレムは、『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』（1985年）で国際的な成功を収め、その後ハリウッドでも活躍しています。ルーカス・ムーディソンは、『ショー・ミー・ラヴ』（1998年）で知られ、その後も様々な作品を発表し続けています。

近年では、レバノン出身のヨセフ・ファレスやイラン出身のレザ・パルサなど、国際的な背景を持つ新進気鋭の監督も登場し、スウェーデン映画界はますます多様化しています。

まとめ

スウェーデン映画は、その歴史の中で常に高い芸術性と国際的な成功を両立させてきました。ベルイマン、シェーストレムといった巨匠から、現代の若手監督まで、数々の才能豊かな人材によって支えられてきたスウェーデン映画は、今後も世界映画界において重要な役割を担い続けるでしょう。

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