処女の泉

『処女の泉』

『処女の泉』（しょじょのいずみ）は、1960年に製作されたスウェーデン映画で、イングマール・ベルイマンが監督を手掛けました。この映画は中世のスウェーデンを舞台に、無惨な事件に巻き込まれた少女の悲しみと、その父親による復讐の筋書きを中心に展開します。整数の意見や感情が絡み合い、神の存在と人間の苦悩が描かれている点が特徴です。

映画の概要

本作は、エステルイェートランド地方に残る13世紀のバラッド『ヴェンゲのテーレの娘たち』を基にしています。脚本は女流作家ウラ・イザクソンによって書かれ、撮影はダーラナ地方の自然豊かな風景とストックホルムの映画スタジオで行われました。ベルイマンの他の作品と同じく、本作も神の沈黙や人間の苦悩がテーマとなっています。

『処女の泉』は、その内容により数多くの映画賞を受賞しました。アカデミー外国語映画賞や、ゴールデングローブ賞外国語映画賞、さらにはカンヌ国際映画祭の特別賞も受賞しています。また、日本でも1961年度のキネマ旬報で外国語映画ベストテン第1位に選ばれました。これにより、ベルイマンの人気はさらに高まり、彼の他の作品と共に多くの観客に支持されました。

ストーリーの詳細

中世スウェーデンの設定で、裕福な地主テーレとその妻メレータ、そして二人の娘カリンと養女インゲリの物語が描かれます。テーレ一家は敬虔なキリスト教徒ですが、インゲリは異教の神オーディンを信じており、カリンを呪っていました。ある日、カリンは両親の指示で教会に向かう途中、貧しい羊飼いの兄弟と出会います。彼らへの同情からカリンは食べ物を分け与えますが、彼らは彼女を強姦し、さらに命を奪ってしまいます。

カリンの死を知った両親は激しい悲しみに打ちひしがれ、特に父テーレは復讐を誓います。朝日が昇る中で、テーレはカリンを襲った兄弟の元へ向かい、彼らを斬り捨てました。しかし、その激しい復讐心により、無罪の末っ子まで殺してしまうのです。テーレはその行動の恐ろしさに愕然とし、神に許しを求めます。

テーレは、インゲリに導かれてカリンの遺体が横たわっている場所に辿り着きます。ここで、彼は神の無慈悲さに激しい怒りを抱きつつ、娘のために教会を建てることを誓います。すると、彼らが重い悲しみを抱える中、カリンが横たわっていた場所から泉が湧き上がります。この光景に感動した一行は、神に祈りを捧げます。

キャスト

本作には、名優マックス・フォン・シドーがテーレを演じ、ビルギッタ・ヴァルベルイがメレータを、グンネル・リンドブロムがインゲリを、ビルギッタ・ペテルソンがカリンを演じました。これらの演技が映画の物語を一層引き立てています。

映画の影響

『処女の泉』は、公開時に扱われたテーマが衝撃的であったため、国内外で多くの議論を引き起こしました。特にアメリカでは、一般向けには編集されたバージョンしか視聴することができず、出版至難の状況が続きました。一説には、ベルイマンもこのシーンを削除するよう圧力を受けたとされています。また、日本でも上映時にレイプシーンが全て削除される事態が起こりました。

本作品は、撮影監督スヴェン・ニクヴィストとの初のコラボレーション作でもあり、彼はその後も多くのベルイマン作品に参加しました。1980年代までに製作されたスプラッター映画『鮮血の美学』のモチーフとしても影響を与えました。

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