イングマール・ベルイマン

イングマール・ベルイマン：20世紀を代表する映画監督の生涯と作品

イングマール・ベルイマン (1918年 7月14日 - 2007年 7月30日) は、スウェーデンのウプサラに生まれた映画監督、脚本家、そして舞台演出家です。牧師の父と、外交官の兄、小説家となった妹を持つ家庭環境で育ちました。ストックホルムで過ごした幼少期を経て、ストックホルム高等学校（現ストックホルム大学）の文学・美術史学科に入学。その後、舞台演出の道へと進みます。

1942年にはスヴェンスク・フィルム社に入社し、映画界へ足を踏み入れました。1945年に映画監督としてデビュー作『危機』を発表した後、低予算映画制作を通して独自の映画スタイルを確立していきます。1950年代に入ると、『夏の遊び』から彼の真骨頂ともいえる作風が明確になり始めます。1953年の『不良少女モニカ』は、フランスのヌーヴェルヴァーグの作家たちからも高く評価されました。

しかし、初期の作品は批評的には高く評価されても、興行的成功には恵まれませんでした。しかし、転機となったのは1955年の『夏の夜は三たび微笑む』です。この作品はカンヌ国際[[映画祭]]で「詩的ユーモア賞」を受賞し、スウェーデン国内でも大ヒット。この成功が、以降の彼の自由な映画制作を支えることになります。

1950年代後半は、ベルイマンの黄金時代でした。神の存在を問う『第七の封印』(1957年)は、カンヌ国際[[映画祭]]審査員特別賞を受賞。人生の老いをテーマにした『野いちご』(1958年)はベルリン国際[[映画祭]]金熊賞、権力と迷信を風刺的に描いた『魔術師』(1958年)はヴェネツィア国際[[映画祭]]審査員特別賞を受賞するなど、主要な国際映画祭を席巻しました。

1960年代に入ると、『処女の泉』(1960年)が米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、世界的な名声を確立。その後も「神の沈黙」三部作と呼ばれる『鏡の中にある如く』(1961年)、『冬の光』(1962年)、『沈黙』(1963年)を発表し、高い評価を得ます。『鏡の中にある如く』は、ベルイマン作品として2年連続で米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞するという快挙を達成しました。1963年にはストックホルム王立劇場の総監督に就任しています。

1970年代には黒澤明やフェデリコ・フェリーニと並び称される世界的な巨匠となりましたが、1976年に脱税容疑で逮捕されるという事件に見舞われます。無実でしたが、この事件をきっかけにスウェーデンを離れ、ヨーロッパを放浪した後、西ドイツのミュンヘンに落ち着きました。しかし、1978年にはスウェーデンで名誉回復がなされ、その後帰国しています。

1982年の『ファニーとアレクサンデル』を最後に映画監督業からは引退しましたが、舞台演出家・脚本家として精力的に活動を続けます。晩年にも、自伝的作品を多く発表し、2003年にはデジタルHD撮影による20年ぶりの監督作品『サラバンド』を発表しました。2007年、スウェーデンのフォーレ島で89歳で死去しました。

ベルイマンの映画作風

ベルイマンの映画は、しばしば舞台劇的であると評されますが、彼は映画と舞台は別物だと主張していました。彼の作品は「神の沈黙」「愛と憎悪」「生と死」といった普遍的なテーマを扱い、形而上学的な深遠さと、時に難解な表現を用いる一方で、分かりやすい作品も多く存在します。特に、女性を主人公に据えた作品が多いことも特徴です。5度の結婚という自身の経験が、作品に反映されていると言えるでしょう。

彼は、シェイクスピアやストリンドベリなどの作品を舞台で積極的に取り上げ、自身の劇団を率いて、日本でも公演を行っています。

作品リスト

彼の作品リストは膨大であり、長編映画から短編映画、テレビ映画、ドキュメンタリーまで多岐に渡ります。代表作として挙げられるのは、『第七の封印』『野いちご』『処女の泉』『鏡の中にある如く』『冬の光』『沈黙』『仮面/ペルソナ|仮面_ペルソナ』『ファニーとアレクサンデル』などです。これらの作品は、現在でも世界中で高い評価を受けています。

受賞歴

ベルイマンは、数々の賞を受賞しています。カンヌ国際[[映画祭]]、ベルリン国際[[映画祭]]、ヴェネツィア国際[[映画祭]]といった世界三大映画祭での受賞歴はもちろんのこと、米国アカデミー賞外国語映画賞、エラスムス賞、ゲーテ賞、レジオンドヌール勲章、高松宮殿下記念世界文化賞など、その功績は広く認められています。

まとめ

イングマール・ベルイマンは、20世紀を代表する映画監督の一人であり、その作品は現在でも世界中の映画愛好家から高い評価を受けています。彼の生涯と作品は、私たちに数多くの示唆を与えてくれるでしょう。彼の作品を通して、人間の存在、生と死、愛と憎しみ、そして神の存在といった普遍的なテーマについて、改めて考える機会を与えてくれるのです。

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